目の前で彼女は乗っ取られたー
それなのに、彼女は嘘をつき続けるー。
彼女を乗っ取ったやつはー
彼女の身体で、嘘をつき続けるー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後ー
亮伍から呼び出された香苗は
何食わぬ顔で亮伍の前に姿を現したー。
場所は、高校近くの公園の一角だったー。
「ーーー…話って何?」
香苗がそう言いながら亮伍の方に寄ってくると、
亮伍は「ーーあ、うんー」と頷きながら
香苗に対して言葉を口にしたー
「ーーーーこの前は、本当にごめんねー。
香苗の言う通り、僕が寝ぼけてたみたいだー」
亮伍は改めてそう謝罪の言葉を口にすると、
香苗は「あ…いいよいいよ、別にーわたしもついカッとしちゃって」と
苦笑いしながら言葉を口にしたー。
「ーはははーそっか」
亮伍はそれだけ言うと、少し間を置いてから、
公園のベンチから立ち上がって言葉を口にし始めたー
「ーネットで不思議な義手を見つけて
500万円を振り込んでー
あの日、僕たちがデートをしていた街と同じ街で、
片腕を切り落として手術を受けてー
手に入れた義手で早速僕の彼女を皮にして乗っ取ったー」
亮伍は歩きながら淡々とそう言葉を口にするー
「ーーー…え」
香苗の表情から笑顔が消えてみるみると青ざめていくー
「そんなこと、あるわけないもんね」
亮伍はそう言うと、無邪気に微笑むー。
「ーーーー……~~~~…!」
言葉を失ってしまう香苗ー
”な、なんだこいつー…
ぜ、全部ー調べたってのかー…?”
香苗を乗っ取っている男は、
そう心の中で呟きながらも
「そ、そ、そうだよ~!あるわけないもん!」
と、香苗のフリをしながら笑うー。
「ーーははは、ならよかったー。」
亮伍は笑うー。
香苗にはー
その笑顔が”怖い”と思えたー。
”くそっ…コイツー、どれだけこの女が好きなんだー!
義手のこと、調べたってのかー?”
自分の焦りと動揺を隠すかのように、
スカートに乗せた手をぎゅっと握りしめながら
必死に香苗を支配した男は考えるー
”いや、待てー例の義手のサイトは当日にはもう
跡形もなく消えていたはずだしー
そう簡単に調べられるはずがー…
あてずっぽうかー…そ、それともー?”
香苗が青ざめていると、
亮伍は「ー僕、確かに見た気がするんだけどなぁー
”その義手で”香苗が乗っ取られるところー」と、
言葉を口にするー
明らかに遠回しに”わざと”言っているような口ぶりー。
「ーー…そ、そ、そんなことーないってばー」
香苗がそう言うと、
亮伍は「そうだよね。僕が寝ぼけてただけだよね」と、笑うー。
「ーーー…そ、そうー…そうだよ」
香苗は苦笑いしながらそれだけ言うと、
亮伍は香苗のほうを見つめながら呟いたー
「ーー警察ー…行こうかなぁ…」
とー。
「ーーーけ、け、警察!?」
香苗がさらに青ざめるー
”く、くそっ…何だコイツー!?
何なんだー!?
実はやべぇ彼氏なのかー!?
それとも、この女を助けるためならどんな手でも使うってかー?”
「ーーま、待ってよ!何のこと!?」
香苗がたまらずベンチから立ち上がって言うと、
亮伍は「ーあははは冗談冗談」と、笑いながら手を振ったー
「ーーあ、そうだー
香苗ー
来週の土曜日だけどさー、
親が家にいないからー
僕の家に来ない?」
亮伍が何気ない顔で提案するー
香苗は困惑しながら
「来週の土曜日~~~?」と、言葉を口にすると
視界を泳がせながら
「ーあ、わたし、お母さんと買い物に行く予定がー」と、
また”嘘”をつくー。
今度は激しく動揺していてー
声も裏返っているー。
”皮”にした時の嘘よりも”明らかに嘘”だと分かりやすいー
苦しい嘘ー。
「ーーそっか~ じゃ、僕、暇だから警察に行こうかなぁ」
亮伍が空を見上げながら言うー。
「ーな、な、さっきから何なんだよ!くそっ!」
香苗が思わず悪態をついてしまいー、
すぐに「あ、ちがっ、ううんーあはっ…あはははは」と、
無理矢理笑ってごまかすー。
「ーーもう一度言うよー」
亮伍は香苗の前に立つと、
「ー次の土曜日、僕の家に来てくれるかな?」と、
香苗に対して言い放つー
香苗は、身体を震わせながら
「うーー…うんー」と、
静かに頷いたー。
話が終わりー
立ち去っていく香苗ー。
亮伍は、香苗の後ろ姿を見つめながらー
”絶対に助けたい”という強い思いを感じてー
拳を握りしめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーあぁくそっ!何なんだよ!」
帰宅すると、香苗は不機嫌そうに鞄を放り投げて
髪がぐしゃぐしゃになるまで
何度も何度もイライラした様子で髪を掻き続けたー。
「ーーは~~~~ムカつくー…」
イライラすることなんて、全くと言っていいほどなかった香苗ー。
しかし、乗っ取られてしまった香苗はー
今までの人生で浮かべたことのないような怖い顔で、
不満の言葉を口にするー
「ーーーあぁぁ…もういいやー」
そう呟くと、香苗は苛立ちをぶつけるかのように
胸を乱暴に揉み始めるー
「嫌なことはエロイことをして忘れるに限るー」
制服を雑に脱ぎ始めると、香苗はそのまま
お楽しみの時間に突入したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー」
翌日以降ー
亮伍は特に特別なアクションを取って来ることはなかったー
”土曜日ー…何をするつもりだー…?”
香苗はそんなことを思いながらも
慎重に対策を練るー。
”親のいない家”に香苗を呼ぶということはー
手荒な真似をしてでも、香苗を助け出そうとしているのだろうかー。
亮伍の方を睨みつけながら
香苗は「そうはさせねぇ…」と、爪をかじりながら呟くー
「どうしたの香苗…?怖い顔してー?」
友達の一人が、そんな香苗に気付いて声を掛けると、
香苗は慌てて「あ、ううんー…なんでもない!」と誤魔化すも、
香苗を乗っ取った男は、亮伍のことが気になって
仕方がなかったー。
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土曜日ー
香苗は、深呼吸してから亮伍の家の
インターホンを鳴らしたー。
”デート”なのかは分からないが、
何となく、自分がゾクゾクするためにおしゃれをしてきた香苗ー。
”亮伍の家に来ない”という選択肢もあったが
亮伍が本当に警察に行く可能性もあったし、
あそこまで詳しく”香苗を皮にしたこと”を知られている以上ー、
警察も本当に動き出す可能性があったため、
約束をすっぽかすことはできなかったー。
”人を皮にして乗っ取る”
そんなことを警察が信じるとは思えないー。
しかしー
亮伍は何故か全ての事情を突き止めているー。
万が一、ということもあるー。
「ーーー待ってたよ」
家の中から出て来た亮伍がそう言うと、
亮伍は、自分の部屋の方に香苗を案内したー
”ーーー…”
香苗は自分の記憶を探るー
”この彼氏が、自分の家にコイツを上げるのは初めてかー”
香苗の中にいる男は、そんな風に呟くー。
香苗の記憶の中に、亮伍の家の中の記憶はないし、
ここを訪れた記憶はないー。
今回が、初めてなのだろうー。
部屋に到着すると、亮伍が何かを取り出し、
香苗の方にそれを放り投げたー。
「ーーな、何?」
香苗がそう言いながら渡されたものを拾うとー、
それは、イヤらしさ溢れるボンテージだったー。
「ーー……あ… …え?」
香苗が顔を赤らめながら亮伍のほうを見つめるー。
いやー、別に香苗を乗っ取った男も、
こういうものをいずれ香苗の身体で楽しもうと思っていたため、
別にそれはいいー
だがー
「ーそれ着て」
亮伍が言うと、香苗は「え…で、でもー」と、困惑するー。
しかし、亮伍は強い口調で
「早く着替えて」と、香苗に言い放つー
「ーー…ちょ、ちょっと待ってー」
香苗が焦りながらそう言うと、亮伍はスマホを手に
警察に通報しようとし始めるー。
香苗はたまらず
「わ、分かったー…ま、待ってー!」と、言うと、
戸惑いながら、そのまま服を脱ぎ始めたー。
”なんだよこいつー…
ま、別に俺もこの女じゃないしー
脱ぐのはいいんだけどよー”
と、慣れない手つきで服を脱いでー
そのまま渡されたボンテージ姿に着替えていくー
着替えると、亮伍は笑みを浮かべながら
「ー僕の言う通りにするんだ」と、突然香苗の身体を抱きしめて来たー
「ーーんっ…?えっ…?」
戸惑い香苗ー
キスから始まりー、
胸を触られてー
イヤらしい手つきで太腿のあたりを触られるー
「ーーえっ… ちょ… なっ…!?」
香苗は困惑しながら声を上げるー。
もちろん、香苗を支配している男も、
香苗の身体を欲望のために使おうとしていたし、
男を手玉に取って、遊びたいとは考えていたー
しかしー
「ーーちょ…ま、待って!こ、心の準備がー!」
香苗が叫ぶー。
それはあくまでもー
”香苗主導”で香苗が優位に立った状態で
男を弄んだりー、
あるいは一人でエッチなことをしたりー、
女の子同士で楽しんだりー
と、いう欲望だー。
こんな風にー
香苗を支配した男が望まぬタイミングでー
しかも、彼氏の方が主導するような形で
お楽しみをしたいわけでは、ないー。
「ーーーなに?」
亮伍は微笑みながらも高圧的な雰囲気だったー
「ーーー…え… わ、わたしたちー
そ、そういうこと、ま、まだ、してないじゃんー」
香苗が戸惑いながら言うー
”記憶”を探る限り、亮伍とエッチなことをした記憶はないし、
亮伍がこんな強引にーーーー
「ーだってー
香苗を乗っ取ってるー。
お前は、香苗じゃないー。
だからー
僕もこうするんだー
見え透いた苦しすぎる嘘をついたって、僕は騙せないー」
亮伍はそれだけ言うと、
「ー今日は最後までヤらせてもらうから」と、
脅すような口調で言い放ったー
「ーえ… いや、ま、待てーわ、分かったー!」
香苗は思わず叫ぶー
”こんな変な彼氏がいるなら別の女にする”
男はそう思いながらここから出て、香苗を開放ー、
別の身体に鞍替えしようとしたー。
しかしー
「ーダメだー。
ずっと香苗を着てろー。
そうしないと、僕は警察にお前のことを全部言うー。
それがイヤだったらー
お前はこれから僕が飽きるまで、ずっと僕の玩具になるんだー。
僕がエッチしたいときに僕のために喘ぐんだ」
亮伍の言葉に、香苗は「な、なんなんだお前!」と、
目に涙を浮かべながら言うー
「この女の記憶と、ちがっーーー」
香苗がそこまで叫ぶと、
亮伍は「これが僕の本性だよー。香苗も、知らないー」
と、冷たい口調で呟いたー
香苗は、何もすることができないままー
亮伍の意のままに弄ばれ続けたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数か月後ー
「ーまた来てくれるなんて、嬉しいねぇー」
あの日ー
香苗が皮にされた町に再びやってきた
亮伍と香苗ー。
だが、あの時とは違う、香苗は
微笑みながらもどこか怯えた様子だったー
「ーーーー…喧嘩でもしたのかい?」
食堂のおばあちゃんがそう呟くと、
亮伍は「いいえ。仲良しですよー」と、
満面の笑みで答えたー
今日はこの後ーー
また”お楽しみ”をする予定だー
亮伍は香苗のほうを横目で見つめながら笑うー
”ーどうせ嘘をつくならー
開き直った嘘じゃなくてー
ちゃんと嘘をつかないとー”
亮伍ーーー
ーーの、中にいる男が笑うー。
”ーお前、下手くそすぎるだろー。”
あの日、この街で腕を切り落として、
人を皮にする義手を付けた後
”亮伍の中にいる男”は、
亮伍と香苗が話しているのを偶然遠目から見かけたー
亮伍が彼女の香苗に”お前は香苗じゃない”と
叫んでいる光景ー。
それを見て男はー
”何だ?早速別の奴が、皮にして乗っ取ったのか?”と、
思いつつ、あることを思いついたー
”ーあの彼氏のほうを乗っ取ってー
彼女の方の”中”にいる奴を脅せばー
俺、やりたい放題じゃね?”
とー。
そして、亮伍たちを尾行しー、
香苗が”自分と同じ義手を手に入れた男に乗っ取られている”ことを
確信した男は、その日の夜ー、
落ち込んだ様子でコンビニに向かう途中の亮伍を
”誰にも見られないように襲い”
皮にしたー。
週明けー
香苗が”亮伍が思ったよりあっさり追求してこなくなったー”と感じたのはー
その時点で既に亮伍が別の男に皮にされて乗っ取られていたからー。
亮伍は笑みを浮かべるー
”最初は俺も女を乗っ取ろうと思ったけどー
こうして、お前みたいな下手くそな嘘をつく馬鹿を脅してー
彼女を玩具にするのー最高だなー”
亮伍の中にいる男は
そう思いながら、これからも香苗の中にいる男を脅して、
香苗を玩具にし続けようと、そう思いながら笑みを浮かべたー
”ーー嘘は、上手につかなくちゃ、なー”
亮伍の中にいる男は笑うー。
香苗の中にいる男は、まさか”自分の彼氏”が、
あのあと、別の男に乗っ取られたなどとは夢にも思わずー、
脅されて玩具にされる日々が続くのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!☆
②の途中でコンビニに向かった際に、
亮伍も別の男に乗っ取られてしまっていました~!
②の途中から明らかに性格が変わっちゃってますネ~!
…最終回まで書いてみて、
ふと、②で亮伍が乗っ取られてなかった場合
どうなったのか、作者の私も気になってしまいました~笑
お読み下さりありがとうございました!
コメント
カップルが二人共皮にされて乗っ取られる展開は珍しいですね。
よくあるパターンだと、女の子だけが皮にされてることが多いですが。
ところで、亮伍がもし乗っ取られてるとかじゃなく、彼女も知らないヤバい本性を隠していたという展開でも面白そうな気がしますね。
コメントありがとうございます~!☆
本性を隠してたパターンのお話は以前書いたような気がしたので
今回は別の人に乗っ取られるパターンにしてみました~!
亮伍がサイトを見つけて対抗手段を練るか?
「香苗」が技手を使って亮伍を始末するか?
と予想しましたが、4人目が出てくるとはね。
相手も技手を持っているんじゃ危ういのは
「香苗」の方か?
コメントありがとうございます~~!☆!
香苗の中にいる男は、亮伍の中に誰かがいることに
気付けていないのでかなり不利ですネ~!