<憑依>あと1週間で滅ぶ世界③~滅亡の日~(完)

憑依するために”パラレルワールド”に飛ぶ必要があった純平は、
”そっくりだけど、違う世界”で、美少女に憑依することに成功した。

しかし、その世界は滅亡寸前の世界…
”崩壊”へのカウントダウンは目前まで迫っていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

隕石が地球に衝突するまであと2日ー。

国際組織の日本支部のビルに案内された香鈴は
困惑の表情を浮かべていたー。

「守護霊様ー…どうか、世界を救ってくださいー」
土下座しながらそう言い放つ男ー

バニーガール姿の香鈴は「え…いやーま、待ってー何のこと?」と、
辛うじて女子高生っぽい口調で言葉を言い放ったー。

「ーーーーーいきなり、こんなことを言われても確かに困るでしょうー
 ただー守護霊様…冷静に聞いていただきたい」

スーツ姿の男はそう言うと、
この世界では以前から時々”守護霊”が憑いている、
そんな人間が確認されているのだと、男は説明したー

「ー私もつい先日までは迷信だと思っていましたー

 人間に憑く守護霊の存在ー」

男はそれだけ言うと
”この世界”には、守護霊が存在するという都市伝説のような話があり、
”人間が憑依される現象”がこれまで何度か確認されているのだというー。

それがー、この世界では”守護霊の伝説”として一部で語り継がれているー

”ーーー…守護霊っていうかー
 それ、多分、俺みたいに別の世界から憑依しに来ただけじゃね?”

香鈴に憑依している純平は腕組みしながらそう心の中で思うー

例の怪しげな売人によれば
この世界には、純平が元々いた世界にはない
”エネルギー”があるのだという。

確かあの売人も純平で”5人目”だと言っていたー

パラレルワールドは無数に存在するらしいため、
前の4人が”この世界”に来たのかまでは分からないが、
あの売人以外にも憑依を仲介している人間はいるのだろうし、
きっと、純平よりも前にこの世界の人間に憑依した人間が
この世界で”守護霊”だとか何だとか勘違いされて、
伝説になっているのだろうー。

「ーーそ、それで仮に俺ー…あ、いや、わ、わたしが
 守護霊だとして、わたしは何をすれば?」

香鈴は
”俺が世界を救えるなら、これからもこの身体をしゃぶりつくせるからなー”
と、心の中で思いながら男の話を聞くー。

「ー守護霊様は憑依の力を持つと、伝説に記されていますー
 そのあなたにー…
 世界を救うため、してほしいことがあるのですー」

スーツ姿の男はそこまで言うと
地球に2日後、衝突する運命の隕石をスクリーンに表示したー

「この隕石への”憑依”ー」
男の言葉に、香鈴はしばらく目をぱちぱちとさせてからー
「はぁっ!?!?!?」と、女子高生の振る舞いも忘れて叫んだー。

香鈴に憑依している純平に、
隕石に憑依して貰い、地球に到達する前に隕石の軌道を変えるか、
隕石を自己破壊させてほしいー、と、
このスーツの男はそう言い放ったー

「ーー(マ、マジかー…?こいつ、頭おかしいんじゃないのかー?)」
香鈴は心の中でそう思いながら考えるー。

”本当かどうかも分からない守護霊の伝説”に縋り、
バニーガール姿で歩いていた女子高生に声を掛けてー
その女子高生に対して、”隕石に憑依して地球への衝突を回避させてほしい”と
土下座しながら頼むー

とても、正気とは思えないー。

いやー
”あと2日で滅ぶ”
だからこそー、そんな伝説に縋り、こんなおかしなお願いを
してしまうのかもしれないー。

「ーーーー」
バニーガール姿のままの香鈴は、しばらく考えていたものの
”どうせ死ぬんだし、もう少し話しぐらい暇つぶしに聞いてやるか”
と、少し調子に乗りながらー

「ーーーーふふふー そうねー
 あんたたちの出方次第じゃ、世界を救ってあげてもいいわ」

突然、女王様のような振る舞いを始める香鈴ー

「ーお…おぉ…ではやはり、あなたは本当に守護霊様ー」
勘違いしているスーツ男が、そう土下座をすると、
香鈴は「そうよ。わたしは守護霊よー」と、言い放つー

”へへへー 女王様気分もゾクゾクだぜ”

香鈴のそんな言動に、
スーツ姿の男は嬉々として、
「ー世界を救うために、ぜひ、お力をお貸しください!」と、言い放ったー

香鈴はニヤッとするとー
「ーじゃあー力を貸す見返りに、わたしの身体、気持ちよくしてもらえるかしら?」と、
偉そうな態度で言い放つー

真面目そうなスーツ姿の男が、途端に表情を変えて
「そ、それはどういうー?」と首を傾げるのを見て
香鈴は邪悪な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

隕石衝突は明日の18時頃ー。

地球ごと粉砕するほどのサイズで、
どこの地域にいようと関係ないー

隕石が衝突すれば、地球は滅亡するー。

「ーーー」
香鈴は、表情を歪めながら
まるで女王のような衣装を身に纏い、
鏡を見つめていたー

昨日、例の男に”世界を救う見返り”として
要求した”わたしにふさわしい女王らしい服”を、
身に着けているのだー。

「ーーーー…にしてもー…」

昨日、スーツ男に
”どうしてわたしが守護霊様だと分かったの?”と聞いてみたところー
”守護霊の伝説”には、守護霊が宿っている人間は
瞳がわずかに”青みがかっている”という伝説があるらしいー

確かにー
よく見てみると、ほんの少し、香鈴の瞳が青くなっているー
ような気がしたー

”ーー絶対、守護霊とか伝説になってるのー、
 俺みたいにエロ目的で別世界から憑依しに来たやつに
 憑依された人間だろ…”

そう思いながらも、
「まぁー明日までせいぜい楽しませてもらうとするか」
と、香鈴は笑ったー

昨日からは”守護霊様”と崇められてまるで女王のような扱いを受けているー。

地球にギリギリまで接近した隕石に
香鈴に憑依している純平が憑依ー、
”隕石”自体を動かすかー
あるいは”隕石”を人間で言う”自殺”のような状態にするかして、
”隕石に憑依することで地球の滅亡を回避する”

それが、スーツ姿の男の作戦ー。

しかしー、それは、”香鈴”に憑依しているものが”守護霊”だと勘違いしている故の計画ー

香鈴に憑依しているのは、ただのエロ目的の純平だし、
そもそも純平はあの怪しげな売人から”憑依は一度きり”と、移動できないことを
明言されているー。
しかも、人間以外に憑依できるのかなんて分からないし、
仮に隕石に憑依したところで、隕石を破壊できるかも分からないー

恐らく、無理だろうー。
つまり、この世界はやはり滅びるのだー。

しかしー”守護霊”として振る舞っていれば
明日ー世界が滅ぶその瞬間まで、守護霊様!とチヤホヤされる
女王様ライフを送ることができるー。

どうせ死ぬならー
そのぐらい、ぜいたくをしてもバチは当たらないだろう、と
彼は考えていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「どうか、お願いしますー」
「守護霊様ー」
「守護霊様ー」

そして、ついに当日がやってきたー。

昨日は、”ブラックホールを人工的に発生させる新兵器”が
隕石に向かって使われたものの、
これも開発中だったため、ブラックホールが発生せず失敗に終わったー

今日は朝から先日も使われた
”核”を連射する原子力機関砲で、ずっと攻撃を続けているが
隕石の表面ー…5パーセント程度を削ったにすぎず、
もはや打ち出せる核も底をつき、
さらには時間的にも足りない状況だったー。

そんな、人類の最後の望みは”守護霊”ー

「(あーあ、こいつら最後には、俺に裏切られたとか思いながら
 死んでいくんだろうなー
 俺、そもそもこの身体から抜け出せねぇし)」

香鈴がそんなことを思っているとー、
”香鈴のために”作られた立派な祭壇の周囲に
男も、女も、子供も、老人も、まるで神を崇めるようにして
集まっているー

「ーーーー」
そんな光景を見て、香鈴に憑依している純平は
”初めて、こんなに大勢の人々に必要とされた”ことで、
少し表情を歪めるー

「ーーー”助けれるなら、助けてやりてぇ気持ちもあるけどー…無理だろ…”」
心の中でそう呟くー

それにー、仮に隕石に憑依できたとして、
隕石を破壊したあと、自分はどうなるー?

「ーーーーー原子力機関砲が停止したようだー」
政府関係者と思われる男が言うー。

他国が続けていた原子力機関砲のために用いる
準備可能な”核”が枯渇し、もはや攻撃することが
できなくなったー

「これで希望はあの”守護霊”を宿す少女だけか?」
「都市伝説頼みかよー もう終わりだなー」

香鈴を誘った男以外には、当然、香鈴に期待していない
人間もいるようで、そんな言葉が聞こえてくるー。

泣きじゃくる子供ー
祈るような女子高生ー

人々が世界の滅亡を目前に、
それぞれの反応を見せているー

「ーーーーーーー…」
香鈴に憑依した純平は、ため息をつくー

ただ、憑依してー
胸を揉んだり、
エッチなことをしたり、
コスプレを楽しんだりー
表向きな普通の女子高生ライフを送ったりー
そういうことをしたかっただけなのにー、
まさか、こんなことになってしまうなんてー。

似てるけど異なるパラレルワールドに飛んでー
そこが1週間後に滅ぶ世界でー
何故か救世主みたいな扱いを受けてー

「ー何だよこの流れはー」
香鈴は今一度ため息をつくとー

”俺も、どうせ隕石で死ぬんだろうなー”

そんなことを呟いているとー
「お願い…助けてー」
と、可愛らしい美少女に声を掛けられたー

目に涙を浮かべながら
「ーわたし、まだ死にたくないー
 お願いー」と、香鈴の腕を掴みながらその少女が叫ぶー

周囲に集まっている人々も、
香鈴に対して”助けて” ”お願いします”と、
言葉を口々にしているー

「ーーーー……」
”人から必要とされること”なんてほとんどなかったー。

香鈴に憑依している純平はそんなことを思いながらー
”隕石がぶつかりゃ、どうせ俺も死ぬんだー
 だったらー”
と、祭壇から空を見上げたー

「ー救ってみるかーこの世界をー」

隕石が地球に接近してくるー。
もはや攻撃による破壊は不可能ー

”ーーこの身体から抜け出してー
 隕石に憑依してー
 隕石をどうにかするー”

そんなこと、できるのかー?
香鈴に憑依している純平は、そう思いながらもー
香鈴の身体から抜け出そうと必死にイメージしながらー
それが実現するように祈るー

あの怪しげな売人は憑依は一度きりだと言ったー。

だがー、”憑依のために必要なエネルギーが空間中に存在している”
この世界ならー
あの怪しげな売人の言った通りにはならない可能性だってー

”抜けろーこの子からー”
”俺の魂ー…抜けろー”
”隕石なんかに負けてたまるかクソがー”

そんなことを何度も何度も強く念じているとー
突然、身体の感覚が抜けたー

「ー!?!?」

純平が驚いていると、
眼前で”抜け殻”になった香鈴の身体が
口を開いたまま、その場に倒れ込むー

「おぉっ!?」
祭壇の下でその様子を見ていた住人たちが驚くー。

「ーーぬ、抜けれたー…マジかー?」
純平はそう言いながらもー
「だったらー!」と、叫ぶー。

自分の霊体をとにかく空まで上昇させてー
さらに宇宙まで向かっていくー

「隕石に憑依なんかできるのか知らねぇけどー…
 こうなったら、この世界救ってやるぜ 

 クソがあ!!!!!!」

純平は叫ぶー
”こんなはずじゃなかったのに!”と、クソ~~~~!!!!と、
叫びながらー
地球まであと数キロまで迫った隕石に突っ込んでいくー。

「ーー!?!?!?!?!?」
隕石に突っ込んだ純平はー

”地球を見つめる視点”に、
視界が切り替わったことに気付くー

「ーやりゃできるじゃねぇか、俺ー」

隕石に口はないー
声としては発されずー

心の中でそう叫んだ純平はー

「あとはーーーー!」
と、”隕石の動かし方”など分からなかったし
動かせるのか分からなかったが
「地球にぶつかるんじゃねえええええええええええ!」と
叫びながら、人間の身体を左に動かそうとするような仕草と
同じような仕草を全力でしていくー

「ーーーぐおおおおおおおお!!!ぶつかるなああああああ!!!!!」

純平は、人生で初めてこんなに一生懸命になったー

最初で最後かもしれないー、全力ー。

やがてーーーーー

「ー!!!!!!!!」
地上で祈るようにして”世界の滅亡”の時を待っていた人々はー
空を見上げながら、”巨大な光”を見たー

そしてーー
それは、地球から逸れてー
地球に衝突することはー、なかったー

「ーおおおおおおおおおおおお!!!」
「やったああああああ!」
歓喜の声が上がる地上ー

「守護霊様万歳!守護霊様万歳!!」
何度も何度も、純平のことを守護霊だと思い込んだ住人たちが
嬉しそうに叫ぶー

「ーーー…感謝しますー。救世主よー」
香鈴を誘ったスーツ姿の男も、安堵の表情を浮かべながらため息をついたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれからー
何百年ー
いや、何千年ー
何万年ー

どのぐらい経ったのだろうかー。

「ーーーーー」
純平は、未だ隕石に憑依したまま、宇宙を漂っていたー。

隕石が地球をわずかに逸れたのは、偶然だったのだろうかー
それとも、奇跡だったのだろうかー

それは、分からない。

しかし、力を使い果たしたのかー、
人間以外に憑依したからなのかー

既に、純平は隕石から抜け出すことが出来ず、
何もすることができないままー

長い長い時をー
宇宙で彷徨っていたー

いつか”何かに激突する時”がくればー
終わるかもしれないー。

しかしー
宇宙空間は広いー
そう簡単には、終わらないー

「ーーーーーーー」
純平は、今日も深々とため息をつきー、
もう、自分が人間であったこともすっかり忘れてしまった様子で
隕石として宇宙空間を漂うのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

世界は無事に救われました~!☆

ただ、純平はこれからもずっと宇宙を
漂うことになりそうですネ~!

どうせ滅亡するから、と、既に略奪が起きてたり、
世界各国が秘密兵器を披露してしまったりした
あの世界は少し心配ですケド…笑

お読み下さりありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    すごいぶっ飛んだオチですね。
    主人公が隕石のまま彷徨い続けることになったのなら、バッドエンドですよね。
    世界は救ったとはいえ。

    • 無名 より:

      ありがとうございます~!☆

      主人公にとってはバッドエンドですネ~笑
      一応、助かりはしましたケド…!