入れ替わり直後、
”重治”の身体のまま、妹の美咲は帰らぬ人となったー
”そんなに俺が嫌いだったのかー”
入れ替わり直後の悲劇ー。
その先に待ち受ける未来とはー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーわたし、近くにいるのに、全然、何も
力になってあげられなかったー
わたし…ダメなーーー…ーーー」
妹の日記を読んで数日後ー。
学校で落ち込んだ様子の美咲(重治)を見て
元彼氏である幹夫が声を掛けて来たー。
”俺、ダメなお兄ちゃんだよな”
そう言いたかったが
流石に美咲の身体でそれを言うことはできないし、
今まで隠してきた苦労が水の泡になるー。
”兄の自殺のことで悩んでいる”と、
表面上は、そう語りながら
気持ちを吐き出す美咲(重治)ー
うっかり”俺”とか、”兄”とか
言ってしまいそうになるが、
それは抑えながら
幹夫に気持ちを吐き出したー
「ーーー」
幹夫は黙って話を聞き終えると、美咲(重治)の頭をポンポンと撫でたー
一瞬ビクッ!としてしまう美咲(重治)ー
”男に頭を撫でられた”経験などなかったからか、
身体が想像以上に反応してしまったー
「ー大丈夫ー。お兄さんだって、きっと美咲のこと
大事に思ってたはずさ」
幹夫はそれだけ言うと、親身になって
その後も話を聞いてくれたー
そしてー
その日の放課後ー
幹夫から、美咲(重治)は”告白”されたー
「一度は別れちゃったけどさー
やっぱりー、美咲さえ良ければもう一度ー」
とー。
「え…」
戸惑う美咲(重治)ー
女子としての生活に大分慣れて来たとは言えー、
まだ”男”と付き合うことはあまり考えられないー。
これから長い間美咲として生きて行けばー
心境の変化も出て来るかもしれないし、
もしかしたら身体に影響されるようなこともあるかもしれないー
確かに、幹夫と一緒にいると安心するような気はするし、
”女子”として、さっき撫でられた時のようにドキドキしたり
するようなこともあるー
でも、”まだ”
完全に女子として男を見ることはできなかったー
「ーあぁ、いや、急に言われても困るよなー」
幹夫は笑いながらそう言うと、
「ゆっくりでいいんだー。俺は美咲一筋だから、
半月でも、何か月でも待ってるからー
気が変わったら、さー」
と、静かに言葉を付け足したー。
・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅して、今日も家の整理を始めるー。
「ーあぁ…そういえばー」
美咲(重治)は、最近は家でもスカートを履いているー。
正直、落ち着かないしズボンに履き替えたいー。
しかし、美咲の身体で今後生きていく上で
スカートを履くような機会はあるだろうし、
そもそも学校でもスカートを履いているー。
家の中でならスカートにソワソワしていても、
見えるような動きをしてしまっても大丈夫だが、
外ではなかなかそうはいかないー
”慣れる”ために、こうして部屋でスカートを履く日を
増やしていたー
「あ~~~…そんなにすぐには慣れないよなー」
美咲(重治)は今日も落ち着かない様子を
見せながら
「ーースマホー」と、呟くー。
そういえば、入れ替わってから
”美咲のスマホ”を放置したままだったー。
”暗証番号とか分からないけどー
まぁ、なんとか頑張ってみるかー”
重治のスマホは、あの日、重治(美咲)が一緒に
持って行ってしまったようで、
自殺した現場で、重治(美咲)の近くで
無残な姿を晒していたー。
そのため、あれ以降、美咲になった重治はスマホを使っておらず、
学校では”ちょっと壊れちゃって~買い替えるか修理するまで待ってて”と、
言って、周囲を誤魔化しているー
「ーーやっぱ誕生日とか、そういうもんじゃないかー」
そう思いながら”母さんなら知ってたりしてなー”と、
妹の美咲は母親と特に仲良しだったためー、
暗証番号も伝えている可能性があるー、と
思いつくー。
「ーねぇ…お母さんー」
美咲(重治)が、母に声を掛けるー。
そしてー
「き、急に暗証番号ド忘れしちゃったんだけどー…
お母さん…お、覚えてない?」
と、聞くと、
母から変に思われると思ったもののー
「ーー…色々あったからね」と
”兄が自殺したショック”を受けていると判断されたのか
あまり疑問に思われなかった様子だったー
「ーえ~っとね…
ちょっと待っててねー
前にー…一緒に何度か操作した時見たもんねー
えーっと…」
母はー
すぐには思い出せなかったが
諦めかけたその時、
部屋に戻っていた美咲(重治)の元にやってきて、
暗証番号を教えてくれたー。
スマホのロックを解除するー。
するとー。
大量のLINEが届いていたー
「あぁ…まぁ、何週間も見れてなかったしなー」
美咲の友達たちのLINEを見つめていく中ー。
下の方に進んでいくとー
「え?」
”お兄ちゃん”と書かれたところにも
メッセージが届いているのが見えたー
「俺から????」
確かに、重治は妹のLINEを知っていた。
だが、”キモイ”と言われるため、ここ半年は送ってなかったし、
”入れ替わりの事故が遭った当日”に、妹のLINEに”重治”からLINEが届いていたー。
「ーーー…俺、送ってないよなー」
そう思いながら
”重治”のLINEから”美咲”のLINEに、”入れ替わりの事故当日”に
送られたメッセージを確認するー。
そこにはーーー
”ごめんねーーー…ばいばい”
と、書かれていたー
それが、最後のメッセージ
「ーーえ…」
美咲(重治)はそう思いながら
”そういえば”と、重治になった美咲は”重治のスマホ”を持って外出したことを思い出すー。
重治のスマホは指紋認証ー。
重治になった美咲が外出して自殺するまでの間に、
重治のLINEから美咲の…自分自身のLINEにメッセージを送ったのかもしれないー
そう思いながら
上にスクロールしていくー
するとー
「ーーー!!!」
”ーーねぇ…ーー…今更って思われるかもだけど
今から帰ってもいい?”
”わたしも元に戻りたいしー
さっきは”あんたの身体で生きるぐらいなら死んだ方が”なんて
言ったけどー死ぬつもりなんてないしー”
”ーーその………ちゃんと、元に戻る方法…話し合おう?”
当日のメッセージはそこから始まっていたー
やはり”死んだ方がマシ”と飛び出したあとに、
重治になった美咲が重治のスマホで自分のLINEにメッセージを送ったのだろうー。
「ーーー」
だが、その内容は
和解とも取れるような内容だったー。
更に文章は続くー
”って、あんた、わたしのスマホのロック解除できないからー
こんな風に送っても読めないね”
美咲のそんなメッセージが続くー
”わたしだって、仲直りするきっかけを探してたけどー、
あんなことがあったし、アンタが助けてくれないせいって
ずっと感情的になってたからー”
”自殺”とは程遠いー
そんなメッセージが続いたそのあとー
”ーーたすけて”
と、いう必死に助けを求めるメッセージが続くー
そしてー
”殺されるー”
”助けてー”
”ーーーーーお兄ちゃんーダメな妹でごめんー”
”ごめんねーーー…ばいばい”
そこでー
メッセージは途切れていたー
「ーーーー…」
美咲(重治)は美咲のLINEに残されたそんなメッセージを
読み終えるとー
すぐに家から飛び出したー
美咲の日記ー
美咲の入れ替わり当日のメッセージー。
美咲(重治)は、家を駆けだしー
”相手”を重治になった美咲の自殺現場に呼び出したー
「ーーーやぁ」
その男がやって来るー
「ーーー……お前ーー美咲に何をした?」
美咲(重治)が歯ぎしりをするとー
美咲の元彼氏・幹夫が「んん?何のことかな?」とうすら笑みを浮かべたー
日記に書かれていた”彼氏”とのトラブルー
彼氏との別れー
入れ替わり当日の”殺される”のメッセージー。
”こいつが、美咲に何かしたんだー”
”美咲は、自殺なんかじゃないー”
これまでの幹夫の振る舞いー
美咲の日記の全文、当日のメッセージからー
美咲(重治)はー
妹は自殺じゃなくて、こいつに殺されたんだー
重治は、そんな結論にたどり着いていたー
「ーーーーーあ~~~~~~~」
スマホの画面を美咲(重治)から見せられた幹夫は
「ーーーーくそっー、あと一歩だったのにー」と、
ニヤニヤしながら首を横に振ったー
「美咲に何をしたんだ!!!」
美咲のフリをするのも忘れて美咲(重治)が叫ぶと、
幹夫はにやりと笑いながら、これまでのことを全て説明したー。
美咲と付き合い始めた幹夫は、本性を現しー
美咲に何度も何度もしつこく、身体の関係を迫っていたことー。
それを拒否する美咲に対して、次第に横暴な態度を取り始めたことー。
ついに、幹夫はある日の放課後、空き教室で無理やり、美咲と
エッチなことをしたことー。
それが原因で美咲に振られたことー。
「ーーー…!」
美咲(重治)は表情を歪めるー。
”ーーもうーめちゃくちゃー…
お兄ちゃんのせいー…
今日もーお兄ちゃんー
”なんか暗い顔してるけどー、何かあったのか?”なんて言ってたー
”悩みがあるなら、聞くからなー”
ってー
聞いてくれなかったじゃんー
あとであとであとであとでばっかりー
もう、いいよー
嫌い”
日記に書かれていたあの言葉ー
あれは、幹夫に乱暴された日ー…
彼氏に襲われて、心がズタズタに引き裂かれていた美咲ー。
それに気づかずー、
何も気づかず、美咲の話を聞いてあげることができなかったー
一番、話を聞いてほしかったであろう美咲を、拒んでしまったー
”妹に彼氏ができた”事に対するー
”美咲を取られちゃうかもしれない”というくだらない兄のプライドでー
彼氏に乱暴された美咲の話を聞いてやることも、気づくこともしてやれなかったー
「美咲ー…」
美咲(重治)が悔しそうに呟くー。
そして、幹夫はさらに続けたー
「美咲に振られたあとー
俺は、何とかして美咲を手に入れる方法を考えたんだー
そして、気づいたー」
幹夫はネットで”入れ替わり”に関する記述を見つけ、
それを死に物狂いで入手したー
それが、重治と美咲が入れ替わる原因となった謎の球体ー。
重治らの家に送られてきた謎の荷物ー
あれはー
この幹夫が送ったものだったー。
さらにー
”ネットで殺し屋ーって言うのかな
それを依頼して、お前の身体になった美咲を消してもらったー
邪魔だったからなー”
幹夫はそう言い放ったー
重治になった美咲は”あんたの身体で生きるぐらいなら死んだ方がマシ”と
確かに言ったー
だが、死ぬつもりなどなくー
あの日、重治(美咲)は家に帰ろうとしていたー
兄に歩み寄り、和解を模索しようとまでしていたー
だがー
幹夫が金で依頼した”殺し屋”に、重治(美咲)は殺されてしまったー
それが、全ての真相ー
「それでー
何も知らないフリして、優しく接してー
もう一度、美咲の彼氏になろうとしたのにー」
幹夫は笑うー。
重治と美咲を入れ替えてー
美咲の身体になった”何も知らない重治”に再告白ー
”美咲を再び彼女にしようと”目論んでいたのだとー。
「ーーテメェ…!!!!!!!!!」
美咲(重治)は、綺麗な手をぶるぶると震わせるー
幹夫の顔面を殴りつけてやりたかったー。
だが、妹の身体で暴力を振るうことはー
重治にはできなかったー
「ーーー中身が違う美咲と付き合って、それで満足するつもりだったのかー?」
美咲(重治)が言うと、
幹夫はニヤニヤしながら「俺さぁー、身体目的だからー」と、
開き直って言い放ったー
「クズ野郎ー」
美咲(重治)はそれだけ言うとー
即座に警察に通報ー
幹夫は”もう美咲と付き合うのは無理そうだしー、どうでもいいや”と、
その場に胡坐をかいて座り込みー、
抵抗する様子は見せず、
そのまま”重治を殺した犯人”として連行されたー
数日後、幹夫に依頼されたプロのヒットマンー
警察にマークされている危険な裏社会組織・銀狼の一員である
坂東(ばんどう)という男も逮捕されたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ーーーーー
「ーーーーーごめんなー…
美咲が苦しんでるのにー
気づいてあげられなくてー」
美咲(重治)が悲しそうに呟くー
その場所はー
”重治”の墓ー。
他の人にとっては、重治の眠る墓だがー、
美咲(重治)にとっては
妹・美咲が眠る墓ー。
「ーー美咲…俺の身体で自殺したと思い込んでたしー
俺…何にも、美咲のこと、分かってやれてなかったー
彼氏に美咲が取られちゃう!なんて馬鹿な意地ー
張らなきゃ、よかったー」
美咲(重治)がそう呟いているとー
ふと、周囲が真っ白な空間に自分がいることに気付いたー
「ーーーえ…」
美咲(重治)が言うと、
奥から美咲が姿を現したー
「ーーえ…ま、幻ー…?」
そんなことを呟いているとー
美咲が少しだけ悲しそうに呟くー
「ーーーーいっぱい酷いこと言って、ごめんなさいー」
美咲がそんな言葉を口にするー。
彼氏であった幹夫に追い詰められていく中ー、
やっとの思いで”兄”に助けを求めたー
けれどー
それを拒まれてー、
幹夫から乱暴を受けた日にも、
ヘラヘラしていた重治を見て、心が折れてー
それ以降、美咲は全ての怒りを重治にぶつけるようになってしまったー
”アンタなんて大っ嫌い”
と、毎日重治に怒りをぶつける日々ー
このままじゃいけないと思いつつもー
素直になれず、日に日に溝は広がって行ったー。
入れ替わってー
いい機会だとー
ようやく美咲が歩み寄ろうとした矢先ー、
美咲は、重治の身体のまま、元カレ・幹夫の陰謀によって命を奪われてしまったー
「ーー見る目がなかったわたしが、いけなかったー
安原くんの本性に、付き合う前に気付ければ、こんなことにはー」
美咲が言うと、
重治は首を横に振ったー
「そんなことないー。俺も美咲になってアイツと話して分かったけどー
表向きはすごい好青年に見えたしー
誰だって騙されるよー」
重治がそう言うと、
美咲は「それでもー」と、「迷惑ばっかりかける妹で、本当にごめんなさいー」と、
深々と頭を下げたー。
「ーー俺の方こそーーー
ーー頼りない兄で、本当に、ごめんー
話を聞けなくて、本当に、ごめんー」
重治がそんな風に、美咲に向かって謝罪の言葉を口にするー
だがー
「ー許さないー」
「ーーえ?」
重治が、少し驚いた様子で顔を上げるとー
「ーわたしの身体で謝られても、許さないー」
と、美咲は少しだけ笑いながら言ったー
「あ…」
重治は”まだ”生きているからかー
美咲の身体のままー
今、この空間には美咲と美咲がいる状態ー
「ー何十年でも、何百年でも”こっち”で待ってるからー
ちゃんと自分の姿で謝りに来てー
わたしもー”わたし”にじゃなくてー
ちゃんとーーおにーーー…あんたに謝りたいしー」
美咲はそこまで言うと、満足そうに少しだけ笑ってー
そのまま光の中に消えていくー
「ー…み、美咲待ってくれ!」
美咲(重治)が叫ぶー。
まだー
色々話したいことがあるー
けれども、美咲は止まってくれないー
そんな中ー、
美咲(重治)は寂しそうにー
けれども意を決してー
「俺は一生懸命美咲の分まで誇れるような人生を生きてー
それからそっちに行くから、必ず待っててくれ!」
と、叫んだーーー
気付けばー
元の墓の前に戻っていた美咲(重治)は、
「ーー必ず、誇れるような人生を送ってー
それでー堂々と謝りに行くよー」と、
決意の表情で、重治の墓ー
いいや、美咲の眠る場所に向かって語り掛けたー
「ーーあ、わたしも、いいかなー…?」
背後から声を掛けられて振り返るとー
そこには、重治の幼馴染だった茉莉花の姿があったー
「ーーあ…まり、あ、いやー…あ、はいー」
美咲(重治)が挙動不審な反応をすると
「美咲ちゃんってなんだかおもしろいねー」と、
茉莉花が優しく笑いながら、
そのまま”重治”の墓の前で寂しそうに言葉をかけ始めたー
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
長い時が流れたー
「ーーーー」
車イスに乗りながら、
”景色”を見つめる美咲(重治)ー
やがてー
意識は薄れてー
気付けば、見たことのない世界を歩いていたー
「ーーーーーお疲れ様ー」
美咲が、あの時の姿のまま、重治の前に姿を現すー
重治が、自分の手を見てー
「あーー…」と、驚くとー
「ーーー”わたし”のこと、大事にしてくれて、ありがとうー」
と、美咲は”自分の身体”を大事にしてくれたことに対し、
感謝の言葉を述べたー
「ーーー俺ー…」
重治は、自分の身に何が起きたのかを理解しつつもー、
美咲の前に立って、
「ーー本当に、ごめんー」と、心からの謝罪の言葉を口にしたー
「ーわたしの方こそ、本当にごめんなさいー」
美咲は、そう言うと、手を差し伸べて優しく微笑んだー
「ーー70年ぶりの仲直りしよー
”お兄ちゃん”」
とー。
「ーーはは…やっとー、”アンタ”を卒業できたー」
重治は涙ながらにそう呟くと、美咲の手を握り返したー
・・・・・・・・・
この日、施設に入居していた80代後半の女性が、
息を引き取ったー
その最期の顔はー
とても穏やかで、何かに満足したような、
そんな、表情だったのだというー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
真相が明らかになった最終回でした~!☆
向こうで再会した二人は、
ようやく仲直りして、前に進むことができそうですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
コメント
この話、ずっと前の、夕暮れ時の涙に、似ていますね。
あの話は憑依で、この話は入れ替わりだし、主人公と女の子の関係も違いますけども。
ところで、重治は美咲の身体で結婚とか、出産とかはしたんでしょうか?
それとも、ずっと独り身?
コメントありがとうございます~!☆
私もラストは少し、夕暮れ時の涙を意識していました~!
重治については、今後描くかどうか少し迷っているので、
今は語らないでおきます~笑