<入れ替わり>そんなに俺が嫌いだったのか①~悲劇~

兄のことが世界で一番大嫌いな妹…

そんな妹と入れ替わってしまった兄。

「アンタの身体で生きるぐらいならー…!」
そう言い残して妹は、兄の身体のまま、自ら命を絶ってしまう…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーちょっと!わたしの視界に入らないで!視力が落ちるから!」

高校生の妹、森野 美咲(もりの みさき)が、
兄・重治(しげはる)に対してそんな言葉を口にするー。

「ーーーなんだよ~!昔は”お兄ちゃん”なんて言っー」
重治が思わずそんな反論の言葉を口にすると、
美咲は「ー目が腐る!消えて!」と、強い口調で言い放ちー、
そのまま立ち去っていくー。

「ーーは~~~~」
重治は思わず大きなため息をついてしまうー。

昔は、こうではなかったー。

だがー
高校生になって、彼氏ができたあたりから、歯車は狂い始めたー

”世界で一番大っ嫌い!”なんて言われた時には
心底ショックを受けたものだー。

最初はツンデレか何かかと思ったが、
デレの要素は全くなく、ただのツンツンだったー。

既にこんな状況になってから半年以上が経過したものの、
未だに妹の美咲には”超”がつくほど嫌われている状態が続いていた。

「ーあ~あ…安原(やすはら)くんと別れても変わらなかったしなぁ~」
ため息をつきながらそう呟く重治ー。

安原、とは妹・美咲の彼氏であった
安原 幹夫(やすはら みきお)のことだー。
どうやら、美咲とは既に別れているようなのだが、
幹夫と別れても、美咲の態度は変わらないままでー
”世界一大っ嫌いなお兄ちゃん”のままだー。

「いや、今の俺はお兄ちゃんですらないかー
 アンタとしか呼ばれないしー」

自虐的に笑う重治ー

いつかまた、お兄ちゃんと呼ばれるような時が来るのだろうかー。
いつかまたー…昔のように仲良くすることはできるのだろうかー。

”今の俺は、アンタだもんなー”

悲しそうにそう笑うと、
重治は再びため息をついて「今日はもう寝よう」と、
言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その翌日のことだったー

両親が仕事で遅い日ー。
大学から帰宅すると、小さな小包が家の郵便受けの中に
入っていることに、重治は気づいたー

その宛名はー

”森野 重治”
”森野 美咲”様

「ーーー…俺と美咲にー?」
重治は少し表情を歪めるー

重治も、美咲もネットで買い物をしたりすることはあるし、
ネットで買い物をする以外にも、
学校関連の書類などが家に届くことはあるー。

しかし、重治と美咲の名前が”一緒に”記載されて
届くような荷物はかなり珍しいー

”勝手に開けていいのかー?これ…”
重治がそう思いながらも
”いや、一応声を掛けるかー”
と、既に帰宅している妹・美咲の部屋に向かって歩き出すー。

「絶対これ”わたしの名前と勝手に並ばないで!名前が腐る!”とか
 言われるやつだろー」

そう言いながら、そのまま部屋をノックすると
美咲が「扉に触らないで。何?」と、不機嫌そうに
部屋の中から返事をしてきたー。

「ーーお、俺と美咲宛に荷物がー…」

そう言うと、美咲が無言で部屋の中から出てきて
重治を睨みつけたー

こんな愛想のなくなってしまった妹が
学校ではニコニコしているのだと言うから、
それはそれで怖いー。

そんな風に思いながら
重治と美咲宛の荷物が届いたことを告げると
「ーーわたしの名前と並ぶとかー…キモッ!
 わたしの名前が腐るんだけど!」と、
不機嫌そうに美咲が言い放ったー

”ーーほぼ予想通りのことを言われたなー”
そんなことを心の中で思っていると、
不機嫌そうに「箱、開けて」と、美咲が言い放つー。

「ーーはいはい」
重治は”中身は何なんだよー”と、思いながら
箱を開けるとー、
中から謎のスーパーボールぐらいの球体が1個だけ、出て来たー。

「ーなんだこれ?」
重治が不思議そうにしていると、
美咲はなおも不機嫌そうに「それはわたしのセリフなんだけど」と、
重治に目を合わせることもなく言葉を口にするー。

「ーーー……さ、触ってもいいか?」
重治が気まずそうに確認するー。
美咲は返事もせずにー、けれども”触るな”とも言ってこなかったため、
そのまま重治はスーパーボールのような謎の物体を手に持ったー

するとー

「ーえっ!?」
スーパーボールのような謎の物体が突如として光り出すー。

「ーえっ!?なに!?ちょっと!」
美咲もそれに気づいて声を上げるー。

すると、光はさらに激しくなりー
やがて、視界が奪われるほどに光が廊下中を包み込むー

そしてー
そのまま二人は意識を失ってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーえ……」

どのぐらい時間が経過したのだろうかー。
重治が目を覚まして、

”俺はー?”と、心の中で困惑するー。

すぐに、”謎のお届け物から光が放たれてー”ということを
思い出すと、
「ー美咲!?」
と、妹の美咲の安否を確認しようと声を上げたー

だがー

「ーー!?」
”美咲!?”と発した声がー
自分の声ではなかったー

それどころかー
美咲の声が響き渡ったのだー

「ーーえ…み、美咲、どこにいーー…え?」

一瞬、自分の声は出なくて、
近くにいる美咲が”美咲!?”となぜか自分の名前を叫んだのかと
勘違いして、続けて言葉を発したもののー
今度はー”自分の口から美咲の声が出ている”ことに気付き、
思わず口元を抑えたー

「えっ…ど、どうなってー…」
口元に触れると、その感触がいつもと違うことー
手が”自分の手”ではないことにも同時に気付き、
険しい表情を浮かべるー

そしてーーー

「うぉぉぉっ!?俺が倒れてるー!?」

廊下で倒れていたのはー
美咲ー…ではなく、”自分”のー、
重治の身体ー

「ーーーう…」
困惑していると、自分の身体ー…
いや、重治の身体がすぐにピクッと動いて意識を取り戻したー

”え…お、俺が美咲になっているってことはー
 ま…まさかー”

重治は美咲の身体で青ざめたような表情を浮かべるー。

”まさか、俺が美咲で、美咲が俺にー!?”

起き上がる重治の身体ー
もしも、重治の身体の中身が美咲であるのであればー
美咲がそのことに気付くまでに、もう、あと数秒しかないー

”ぜ、絶対、俺ーーこ、殺されるー!?!?!?”

視界に入らないで、目が腐るー!
なんて言われるぐらいだー
身体が入れ替わったなんて知られたら
絶対に無事では済まないー!

そう思いながら、
美咲(重治)が困惑の表情を浮かべているとー
「ーな、な、な、なんでわたしが目の前に~~~!?!?!?」
と、重治になった美咲が悲鳴に似た叫び声を上げたー

そしてー
その直後、
「っていうか声 キモッ!!!!!!!!!!!!!!」
と、大声で叫んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

入れ替わったことに気付いた直後に発する言葉が
キモッかよー

と、そう思いながら、
美咲(重治)は重治(美咲)のほうを見つめるー。

入れ替わってしまった美咲は
重治の身体で、ずっと泣き続けていたー

「あ、あのーー…お、俺の身体になってー
 イヤなのは分かるけどさー…
 す、すぐに元にー」

美咲(重治)が言うと、
重治(美咲)は近くにあったぬいぐるみを投げつけながら
「わたしの身体で喋らないで!何もしないで!呼吸もしないで!」と
怒りの形相で叫んだー

「い、いや、でも、呼吸はー…」
美咲(重治)が困惑するー。

美咲は、可愛いー。
兄である自分がそう思うのもアレかもしれないが、
可愛いー。

少なからず、美咲の身体になって、ドキドキはしているー。

しかしー。
その美咲に”世界で一番嫌い”とまで言われてしまっている状況である以上、
美咲の身体にドキドキしている場合ではないー。

「ーあの変なボール!あんたが仕組んだんでしょ!」
重治(美咲)がそんな言葉を口にするー。

「早く!早く元に戻してよ!」
重治(美咲)が言うー

泣きながら怒り狂っている自分をを見るのはー
とてもおかしな気持ちだー。

目の前に”自分”がいるだけでも、
大分奇妙な感覚に陥ると言うのに、
それだけではなく、
”目の前で男子大学生の自分がメソメソと泣いている”のだー。

「ーー触らないでよ!!!!」
うっかりスカートに手が触れてしまったことに
激怒する重治(美咲)ー

「え、あ、いやーご、ごめんー」
美咲(重治)が困惑した表情で謝罪の言葉を口にするー。

別にいやらしい意味で触ったわけではなくー、
本当に偶然、触ってしまっただけだったー。

強いて言うなら、ちょっと足をあたりが落ち着かずー、
ズボンを履いているような感覚で手を動かしたら
触れてしまったー…と言う感じだが
そんなことを言っても”言い訳の嘘つき”として
扱われて絶対に重治(美咲)がさらに激怒するだけなので、
それは口にしなかったー。

「ーーー……と、とにかく元に戻る方法ーーー」

「ーー喋らないでってば!」
重治(美咲)が泣きながらそう叫ぶと、
「ーーで、でも…元に戻るためにはー」と、
美咲(重治)は困り果てた様子で、”自分の身体をした妹のほう”を見つめたー。

しかしー

「ーあんたがやったんでしょ!」
と、再び決めつけの言葉を投げかけられるー。

美咲からすればー
そう思うのかもしれないー。
でも、重治は本当に何もしていないし、何も知らないー

そう思いながら
”勝手に犯人にされてしまう恐怖”と
”こんな状況になってしまった焦り”から
緊張で口が渇くのを感じー、
なんとか美咲を落ち着かせようと言葉を振り絞ろうとするー。

だがー、自分でも情けないと思ってしまうぐらいにー、
思春期真っ最中で”世界で一番嫌い”と、自分のことを言ってくる
妹の美咲のことが、正直、重治は”好きだけど苦手だった”

顔を合わせるたびに罵倒されたり、キモイと言われたり
し続けていればー
やはり、無意識のうちにも苦手意識を持ってしまうー。

美咲の身体でオロオロとしていると、
やがて、重治(美咲)は叫んだー。

「ーあんたの身体で生きるぐらいなら、
 死んだ方がマシよ!」

とー。

そう叫ぶと同時に、重治(美咲)は泣きながら1階に駆け下りて
そのまま玄関の方に向かうー

「えっ!?おい!美咲!ちょっと待てって!」
慌てて後を追いかける美咲(重治)ー

だがー
美咲は運動が得意ではないー。

”重治の身体”の全力疾走に追いつくはずもなくー
髪が揺れー、スカートがふわふわとしてー、
上手く走ることもできず、
すぐに息切れも始まりー、

やがてー
重治(美咲)を失ってしまったー

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
美咲(重治)は荒い息をしながら、
”お、俺はどうすればー”と、困惑の表情を浮かべたー

早く、元に戻らないといけないー。
自分のためにも、美咲のためにもー。

一旦、重治(美咲)が帰宅したら
土下座してでも一緒に元に戻る方法を探してもらおうー。

両親に信じてもらえるか分からないが
仕事で帰りの遅い両親が帰宅したら、
両親にも相談をしてー

そう思いながら、美咲(重治)は一旦帰宅するー。

しかしー
”すぐに帰ってくるだろう”と、思っていた
重治(美咲)がいつまで経っても帰って来ないー。

やげて、両親が帰宅してー、
”入れ替わり”のことを話そうとしたものの、
”二人揃ってからじゃないと、疑われる可能性も高まるよな”と、
とりあえず”美咲のフリ”をするー。

だがー
ついにその日、重治になった美咲は帰って来ずー、
両親も困惑の表情を浮かべたー

”美咲のフリ”をして”警察に相談した方がいいよ”と、
両親に伝えたものの、
”よく、友達の家に泊まること”はあったことや
”大学生であること”からか、翌日まで様子を見ることになってしまったー

「ーー美咲がお兄ちゃんの心配するなんて、珍しいね?」
母親が少し不安そうにしながらそう言葉を口にするー

「えっ!?あっいやっ!えっと、そのー
 お兄ちゃー、いやーあ、あいつもいないと心配だから」

美咲(重治)は、そんな言葉を口にしながら
慌てて部屋へと思ったー

”お風呂はどうすりゃいいんだー…?
 
 明日土曜日だし、無許可でお風呂入ったら殺されそうだからー
 今日は我慢するかー”

そんなことを思いながらー
美咲(重治)は、美咲の部屋でベッドを使わず、椅子に座ったまま
眠りについたー。

身体は美咲のものだがー
それでも、美咲のベッドで眠ったら、殺されそうな気がしたからー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そしてー
その翌日ー

「ーーえっ!?」

美咲(重治)は呆然とするー。

混乱した様子の両親から告げられた言葉はー

”重治が飛び降り自殺をした”
と、いう恐ろしい言葉だったー

「え……じ、自殺ー…?」

美咲(重治)は呆然とするー

一気にー
”自分の身体”と”大事な妹”
その両方を失ったという事実にー

美咲(重治)は思わず呟いたー

”そんなに俺が嫌いだったのか”

とー…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

入れ替わり直後の悲劇…!

あらすじ文(一番最初に表示されている文章)で
ここまで書くか迷いましたが
このお話のテーマを先に伝えた方がいいような気がして
あらすじに自殺してしまう部分まで入れました~!
(内緒にしておくか結構迷いましたが
 ツイッターの告知でも、サラッと書いてあるので、
 今回は先に明かすスタイルで…★!)

いきなり辛い状況に置かれたお兄ちゃんは
これからどう行動していくのでしょうか~?

続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!

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