<憑依>憑依予告①~17時にこのビルにいる全員に憑依する~

”17時00分にこのビルにいる全員に憑依するー”

そんな”憑依予告”がとあるビルに対して行われたー。
しかし、そんな予告を鵜呑みにする人間はおらずー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なんだこれはー?」

某所に存在する巨大ビル
”第7フューチャービル”ー。

ビルの中には様々な商業施設が存在しており、
上層階には企業のオフィスや事務所なども多数入居している
巨大ビルだー。

そんなビルにー

とある”予告”が入ったー。

しかしーーー

「ー憑依予告ー?」
第7フューチャービル内に入っている企業の社長が
表情を歪めるー。

よくある”爆破予告”ではなくー、
今日、このビルに入った”予告”は、
”憑依予告”だったー。

”17:00にこのビルにいる全員に憑依するー”
そんな風に書かれているー

「ーーー何だよ、憑依ってー?」
社長と共に起業した副社長の男が
苦笑いしながらその内容を見つめるー。

”憑依予告”には、
17時にこのビルにいる全員に憑依するー、と書かれているー。

その下には憑依の説明がご丁寧に貼り付けられていてー、
”17時までにこのビルから出なかった身体は全部俺のものだ”
と、そうも書かれていたー

「ーーははは…明らかに悪戯だなー」
社長は呆れ顔で笑うー。

「ーはははは だよなー。
 爆破予告でさえ、大半悪戯だしーー

 まぁー、あれだな
 こういういかにも子供じみた予告なら
 逮捕されないとか考えてるのかもな」

副社長の男がそう言いながら笑うー。

そんな”憑依予告”はー
この第7フューチャービルに入居している
ほとんどの店・企業に届けられていたー

ほとんどの店や企業は
そんな予告を”偽物”だと判断ー。

まともに相手にするようなところはなかったー。

念のため、警察に相談を行いー
警備の強化や、パトロールなどが行われたものの、
当然異常は発見されずー、
怪しい人間もいないー。

”爆破予告”であれば、
明らかに”嘘”っぽいものであっても
当然対応は行われるー

しかし”憑依予告”という明らかに
悪戯としか言えないような予告であったために、
第7フューチャービルからの避難が行われたり、
封鎖が行われたりすることはなくー、
多少の騒がしさはあったもののー、
”そのまま”いつも通りの光景を、晒していたー。

・・・・・・・・・・・・・・

「ー憑依って、アレかなー?」

第7フューチャービルに入居している
アクセサリーや小物類を作っているベンチャー企業の
社員・里穂(りほ)が笑いながら言うー。

「ー他人の身体に乗り移っちゃうぞ~!
 ってやつじゃない?」

社長の久美(くみ)が、オバケのようなポーズを
しながらそう言うと、
他数名の社員が笑うー。

「警察の人も一応来てたみたいだけどー
 こういう悪戯があると大変だよね~」

社員の一人・葵(あおい)が、笑いながらそんな言葉を
口にするー。

そもそも”憑依”なんてできるはずがないしー
仮にできたとしても、
このビルには毎日、何人の人間が
出入りしていると思っているのかー。

一斉にビルの中にいる人間に憑依するなんて、絶対に無理だー。

巨大犯罪組織でもない限り、
ビルの中にいる人間全員に憑依することなど、
絶対にできないー。

「ーーあ、でも里穂ちゃんオバケとかそういう話苦手だよね~?
 もしかしたら予告送ってきたの、オバケかもだし!」

社長の久美が揶揄うようにして言うと、
里穂は「じゃあ今日は早めに帰ろうかなぁ~」
と、苦笑いしながら答えたー。

誰もー

第7フューチャービルにいる人間の誰もが
”憑依予告”を真剣に考えていなかったー

通報を受けて念のためやってきた警察官も
”今まで爆破予告の対処には何度かあたりましたけど、
 憑依予告なんて初めてですよー”と、
苦笑いしていたー。

明らかな悪戯ー。
警察官も含め、誰もがそう思っている状態のままー
時間は既に16時を過ぎー
”予告された時間”まで1時間を切っていたー。

「ーーねぇねぇ聞いた?」
1階と2階に存在するショッピングモール地帯を
歩きながら、高校生カップルが雑談をしているー。

「ーーいやいや、そんなこと絶対ないだろー」
彼氏の雄太郎が彼女から”このビルに憑依予告があったらしい”という
言葉を聞いて、思わず笑いながらそう呟いたー

「ー憑依って、テレビで悪い怪人が人間に乗り移ったり、
 漫画とかで悪党がやるアレだろ?

 現実でそんなことできたら、みんなとっくに憑依されてるよ」

笑いながら歩く雄太郎ー

「ー実際、誰も避難してないしー
 誰がそんな悪戯したんだろうね?」

彼女の美由紀(みゆき)が笑いながら言うー。

「ーーさぁなぁ…ま、暇な奴なんて世の中にいくらでもいるしー」

雄太郎はそれだけ言うと、
「ーせめて、”このビルの中にいる誰かに憑依します”ぐらいに
 しておけば、もうちょっと信じてもらえたんじゃね?」と、
呆れ笑いを浮かべるー。

「ーたしかにー。全員に乗り移るとか、現実離れ
 しすぎてるもんねー」

そんな会話をしながらフードコートにやってきた二人ー。

店の人たちもー
上層階のオフィスでもー、
ビルの関連者もー、
フードコートを利用している客たちもー、
誰一人として”憑依予告”を真に受けずー
”いつも通り”の時間が流れていくー。

高校生カップルの二人は、食事を終えて
そのまま第7フューチャービルの外に出るー。

「ーあっ!」

その時だったー
突然、美由紀が背後で声を上げたことに
少し驚きながら雄太郎が振り返ると、
「ーえ?」と、心配そうな表情を浮かべるー

「ーあ、お母さんから買い物1個頼まれたの今思い出しちゃってー」
苦笑いする美由紀ー

「ーーははは、なんだよ うっかりさんだなー
 急に変な声出すから”憑依”されたのかと思ったぞ?」

雄太郎がそう言いながら
スマホで時間を確認するー。

16:57ー
よく見たら、まだ”憑依予告”の時間ですらないー。

「まさかー っていうかまだその話、気にしてたの?
 わたし、すっかり忘れてたー」

笑う美由紀ー。

少し間を置いてから
「頼まれたもの、どうしよっかな~…」と、呟くー

少し面倒臭そうにしている美由紀を見て、

「ーーここで待ってるからー
 何頼まれてるのか知らないけど、買ってきなよ」

雄太郎がそう言うと、美由紀は「うん」と言いながら
そのままビルの方に戻っていくー。

そして数分後ー
16時59分30秒ー

間もなく”憑依予告”の時間を迎えようとしていたー。

「ーー社長!もうすぐ例のあの時間っすよ!」
ビル上層階のとある企業の社員が笑うー。

「ーははは、憑依予告かー。
 俺たち30秒後には乗っ取られていたりしてなー」
社長が笑うー。

「ーーあ、例の悪戯の時間!」
アクセサリー・小物類のベンチャー企業の社長・久美が
別のオフィスで時間に気付いてそう呟くとー
他の社員たちが苦笑いするー。

誰もがー
何も起こらないー

”憑依予告”はただの悪戯だと、
そう、決めつけていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

17:00ー

その瞬間が訪れたー。

「ーーーー」

第7フューチャービルの中では、特に異変が
起きることはなく、
そのままの日常が流れているー

オフィスでは、いつも通り社員たちが仕事を続けー、
フードコートでは、そのまま普通に利用客たちが
食事を楽しんでいるー

「ーーお待たせ~!」
高校生カップルの美由紀も、母親から頼まれた買い物を終えて、
そのままビルの外へと出て来るとー、彼氏の雄太郎と合流して、
「ーー買い物終わったよ~!」と、微笑んだー

17:05-

やはり、悪戯だったー

よくある”爆破予告”の憑依バージョン…
そんな感じだろうかー。

ビルの中で何かが起きることはなくー、
念のためビル周囲をパトロールしていた警察官も、
時間が過ぎたを確認すると、
ビルの中に戻っていき、ビル内部をパトロールしていた
警察官と合流、
「やはり何も起きなかったなー」と、
笑いながら雑談を始めるー。

だがーーー

雑談相手のー
ビルの中をパトロールしていた警察官は、
外をパトロールしていた警察官に見えないように
不気味な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーじゃあ、また明日~!」
高校生カップルの美由紀と雄太郎が分かれるー。

「ーーーー…」
雄太郎と別れた美由紀は、
少しだけ雄太郎の背中を見つめたあとに
静かに笑みを浮かべるー。

「ーーーふふふ…」
いつもの笑みとは、少し違うー

そんな、不気味な笑みを浮かべながら
美由紀は、自宅の方に戻っていくー

「ーーただいま~~!」
美由紀がいつものようにそう呟くとー、
母親からの返事を確認して、
そのまま自分の部屋へと戻るー。

部屋に戻った美由紀は、ニヤァ…と笑みを浮かべると、
鞄を放り投げてー
「ーJKの身体、げっとぉ~♡」と、
嬉しそうに、そして妖艶に囁いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日もー

第7フューチャービルでは、特に異変もなくー
そのまま”いつも通り”の光景が広がっていたー。

「ーーーおはようございます」
ベンチャー企業の社員・里穂が挨拶をすると、
社長の久美が「あ、おはよ~!」と、笑いながら答えるー。

「ーー昨日はどうだった?」
社員の葵がそう言うと、
穏やかそうな顔立ちの里穂が、突然表情を歪めたー

「ー顔は大人しそうなのに、身体はエロくて
 最高だったぜー」

とー。

突然、豹変した里穂ー。

だがー
そんな里穂を前にして、葵も驚く様子を見せないまま葵も
笑みを浮かべるー。

「ーふ~ん、逆にこいつはおしゃれだけど、
 案外、メイク落とすと地味な感じだったぜ へへ」

葵が、里穂と同じような笑みを浮かべながら言うー。

そんな葵と里穂を見て、久美は
「ーちゃんと撮って来た?」と、笑みを浮かべながら言うー。

社長の久美の言葉に、
里穂と葵は頷くとー、
そのまま”自分がエッチしている最中の動画”を
見せ合い始めたー

「ーふふっ…うっわ…エロっ!」
「ーーなんかこういうの見てると興奮してきちゃうなぁ」

三人はそんなことを言いながら、その場でお互いの
胸を揉んだり、キスをしたりー、
さらには他数名の社員も呼んで、そのまま
オフィス全体で喘ぎ声が響き渡り始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーったく、何で俺はおっさんなんだよ」

ビルの上層階に存在する別の企業のオフィスでは
副社長の男が拗ねながら呟くー

「ーははは、仕方ないだろー
 とりあえず俺たちは、”こいつらの記憶”通りに
 生活を続けよう」

社長の男がそう言うと、
副社長の男が「へいへい」と、ため息をつくー。

「ーーこれも”大事な役目”だからなー」
社長の男はそう呟くと、不気味な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから2週間が経過したー。

「ーごめん、今日はちょっと用事があってー」

彼女の美由紀がそう言うと、
足早に立ち去っていくー

「ーーーー」
雄太郎は、そんな美由紀の後ろ姿を見つめながら
少しだけ”とある不安”を覚えたー。

最近ーーー…
”美由紀の様子が少し変”だー。

妙に冷たくなって、余所余所しくなった気がするー。

元々は男女問わず、慕われているタイプのような子だったがー
最近は”女子”とばかり話していて
男子には妙に冷たい気がするー。

最初は”浮気”されているのかとも思ったー。

だがー
思い起こしてみると、
美由紀の様子が変だと感じたのは、あの日ーーー

”第7フューチャービルで憑依予告”があった日以降からだー

しかもあの日、”憑依予告”のあった17時00分に、
美由紀は”お母さんに頼まれたものがあったのを思い出した”という理由で
あのビルの中に戻ってしまっているー

「ーー…いやー…そんな、まさかなー」
雄太郎は嫌な予感を感じながらも、
どうしてもあの日の”憑依予告”のことが
頭から抜けずに、どこかで引っかかり続けていたー。

②へ続く

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11月最初のお話デス~!

憑依予告…
いったい、何が起きたのでしょうか~?

何かが起きたのは、間違いなさそうですネ…!

今日はこのお話とは別に、憑依空間600万アクセス記念小説の
最終回も18時に投稿するので、
そちらもぜひ楽しんでください~!

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憑依<憑依予告>

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