偶然、操りの秘薬を飲んでしまったスライムに
洗脳されてしまった王国の姫。
操られた姫によって王国はスライムの意のままにされていくー。
・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
スライムは、王宮内でメイドが貴族に対して
”ご主人様”と言っているのを見て、
その響きが何となく気に入ったー。
”僕のことをご主人様と呼べ”
心の中でそう念じると、
言葉を発することはできなくても
洗脳したリネーア姫にそれが伝わるー
「はい…ご主人様…」
二人きりの状況ー。
リネーア姫が虚ろな目でそう答えると、
スライムは自分のドロドロした身体を嬉しそうに上下させたー。
”お姫様って綺麗だなぁ…”
スライムはそんなことを思いながら
リネーア姫のドレスの中に侵入していきー、
太腿のあたりを移動するー。
そのまま姫の身体のあちこちを這いずり、
嬉しそうに身体を動かすと、
”人間のお姫様は僕のものだ”と、
嬉しそうに、心の中でそう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・
「ーブルーノ殿」
騎士の一人、ベルンハルドが幽閉された
ブルーノの元を訪れるー。
ブルーノは「ベルンハルド様…!」と
声を上げると
「すぐにここから出してください!」と、
牢屋の中から叫んだー
人格者として知られる騎士・ベルンハルドは
数十年に渡り、王国に仕え、その経験も豊富な騎士だ。
ブルーノも、そんな彼のことを信頼しているー。
「ーー姫様は今、正気ではないんです!」
ブルーノが叫ぶと、
ベルンハルドは「分かっているー」と頷くー
「儂にも見えたー。
”あの光”ー。
一瞬だったが、あのスライムがリネーア姫に
何かをしたのだろうー」
ベルンハルドは鋭い目つきでそう呟くと、
「だがー、スライムにそのような力があるとも思えないー
あのスライムは一体何者だ?」と、
困惑の表情を浮かべたー
「それは分かりませんー。
ですが、あのスライムは危険ですー
早いところ、討伐した方がいいー」
ブルーノがそう言うと、
ベルンハルドは「分かっている」と頷くー。
「あのスライムが姫様に何かをしたのであれば
奴を倒せば、姫様は正気に戻るであろうー」
その言葉にブルーノは「だったらすぐに奴をー!」と、
声を上げたものの、ベルンハルドは首を横に振ったー。
「ドンが死んだよ」
とー。
「ーーえっ!?」
”ドン”とは、ブルーノもよく知る騎士の一人だ。
そのドンが、先日、スライムを斬り捨てようと、
リネーア姫と共に行動するスライムに斬りかかったのだと言うー。
しかしー
リネーア姫は「ご主人様に手を出さないで!」と激怒ー。
”ご主人様を傷つけるなら、わたしも死にます”と、
自分に剣を向けたのだと言うー。
そしてー、
姫の身を案じ、スライムに手出しできなくなってしまったドンが
狼狽えているとー
”スライムの命令を受けた”リネーア姫にその場で斬り捨てられて
命を落としたのだと言うー。
”悪者はやっつけろ”
スライムのそんな命令に従ったリネーア姫が、
騎士を斬り殺したのだー
「そんなー…」
その話を聞かされたブルーノが呆然とするー。
「ー姫様が騎士を剣で斬り捨てるなんてありえないー
やはり、あのスライムに操られているのだろうー」
ベルンハルドはそう言い放つと、
「ー騎士の中でも動揺が広がっているー。
ことは慎重に進めねばならないー」と、
険しい表情で呟いたー。
「ーーー」
ブルーノは考え込むー。
確かに、リネーア姫がスライムに洗脳されているとして、
”スライムを倒そうとすると”
リネーア姫が盾となって立ちはだかったり、
自分を人質にするようなことをされてしまうと
手出しができないー。
しかも、スライムがリネーア姫に命令して、
リネーア姫が攻撃してくるとなれば尚更ー…
「ーーー…姫を人質に取られているのと同じようなものって
わけですかー」
ブルーノが言うと、ベルンハルドは頷くー。
「くそっ!見習いでも簡単にやっつけることができる
スライムごときにー!」
一人、牢屋の中で怒りを露わにするブルーノ。
「ーーそれにー
姫様は正気だと主張するものもいるー。
王宮内の状況は日に日に悪化する一方だー」
ベルンハルドはそう言うと、
「ーブルーノ殿ー。どうか、力を貸してもらいたいー」
と、ブルーノに頭を下げてから、
ブルーノが幽閉されている牢屋の扉を
周囲を見渡しながら、静かに開いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”僕たちのために働いてくれる仲間を増やそう”
スライムから、そう指示を下された
リネーア姫はー、
自らの記憶を探りー
”リネーア姫を女神の再来だと崇拝する過激な団体”の
代表・ヴィンセントを呼び出したー。
洗脳される直前、リネーア姫が頭を悩ませていた存在だー。
「おぉぉ!女神!この私を自らお呼び出し下さるとは!
恐悦至極ッ!」
ナルシストのような雰囲気のヴィンセントがそう叫ぶと、
リネーア姫は「あなたにお願いがありますー」と、
悪そうな笑みを浮かべながら近づいていくー。
「ーこれからわたしは、ご主人様のための王国を
作っていきますー
不満を言う者も出てくるでしょうー
あなたには、そんなわたしの護衛役をお願いしたいのです」
リネーア姫の言葉に
「この私が……!女神の護衛ッ!?」と、
幸せそうな表情を浮かべるー。
スライムをご主人様と呼んだことには
全く疑問を示さずに、
ヴィンセントは嬉しそうにその場に膝をつくと、
「ーこの私、ヴィンセント、女神様のために
全てを捧げることをお約束しましょう!」
と、リネーア姫に対して言い放ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーどうして、動く者が少ないのですか?
姫様の様子が明らかにおかしいのは
あの場にいた者なら分かってるはずだ!」
数日後ー
騎士・ブルーノが、
ベルンハルドや、彼に同調する騎士・大臣たちの
前でそう言い放ったー
「ー姫様が操られているという確証が持てない者も多いのだろうー。
スライムが人を操るなどという話は聞いたことがないー。」
騎士の一人、アントンがそう呟くー。
仮にスライムを斬り捨てて、
もしも”姫”が正気だった場合、
その人間は”反逆者”となってしまうー
”リネーア姫が確実に洗脳されている”という確証が持てないことが
まず、動く者がすくない理由の一つー
もちろん、あの時、異変に気付かなかった人間もいるし、
スライムを攻撃しようとすると、洗脳された姫がそれを
守ろうとすることも、手出しできない理由の一つだー。
最悪の場合、スライムに姫が自殺させられてしまう
可能性も否定はできないー。
そしてー
「ーー姫を妄信的に崇拝する連中も元々いるー。
その者たちはどんなに姫がおかしな行動をしても
姫についていくだろうー。
それとー」
ベルンハルドが少し表情を歪めながら言葉を止めると、
女性騎士のカミラが頷いてから、カミラが言葉を続けたー
「ーわたしの部下の調査によると、
姫様が一部の大臣や騎士を誘惑してー、
仲間に引き入れているそうだー。」
カミラの言葉に、ブルーノは「誘惑ー?」と、表情を歪めるー
「ー姫様がそんなことするはず、絶対にない!
やはりあのスライムが!」
ブルーノが感情的になって叫ぶー。
「ーーー貴殿は確か、
姫様の幼馴染だったなー?
操りの力を持ったスライムなど、聞いたことがないー。
貴殿が何か、関係しているのではあるまいな?」
騎士・アントンがブルーノのほうを見て言うー
「ーーーーそれはどういう意味ですか?」
ブルーノが不満そうに言うー。
「ーー貴殿が、あのスライムと実は関係があるのではないか、
と、問うているのだ」
アントンの言葉に、
ベルンハルドが「アントン殿ー。今はそのような仲間割れを
している場合ではない」と、ため息をつきながら言うー。
「ーーこれは失礼ー」
ベルンハルドの方が古株であるからか、アントンはそのまま
黙り込むと、
「ー案ずるなー手は既に打ってあるー」
と、女性騎士のカミラが口を挟んだー
「ー手?」
ベルンハルドが聞き返すと、
カミラは「私の配下の暗殺部隊に先ほどスライムの駆除を命じた」と、
淡々と答えたー
「ー事後承諾とは、感心せぬな?」
アントンが言うー。
それに対し、カミラは表情を変えずに
「ーこういう事態は時が経てば経つほど、深刻な方向に進むー。
できればあの日、すぐにスライムを処分したかったがー
確実に姫様を救出するためにこちらも準備が必要だったのでなー」と、
静かに呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーよし、殺れ」
その日の夜ー。
カミラ配下の暗殺部隊がスライムを襲撃したー。
だがーー
「ーー!?」
暗殺部隊の一人が表情を歪めるー。
”攻撃が、はじかれたー!?”
スライムに、攻撃をはじく力などないはずー。
ーー!!!
「ーーまさか!」
暗殺部隊の一人が、背後を振り返るー。
背後にいたリネーア姫の姿を見て、暗殺部隊の男は気づくー。
「ーーー姫様の、聖なる魔法かー」
リネーア姫は王家代々伝わる聖なる力ー
光の魔法を使うことができるー
その魔法で、スライムの周囲にバリアのようなものを
展開していたのだー
「ーーご主人様に手を触れることは、許しませんよ」
リネーア姫が怒りの形相でそう呟くー。
「ーー姫様ー…」
暗殺部隊の5人は表情を歪めるー。
しかし、隊長らしき男はすぐに言い放ったー
「姫様ー御免!
すぐに正気に戻れます故、それまでご辛抱をー」
そう叫ぶと、2名が姫を気絶させようと行動に出て、
残り2名がスライムの周りに展開ー、
隊長らしき男が迅速に指示を下したー
がーーー
「ーー女神様に手出しはさせんぞッ!」
リネーア姫を”女神”と崇拝する過激な団体のリーダー
ヴィンセントとその配下が部屋になだれ込んでくるー。
「ー!?」
暗殺部隊の男たちと過激団体のメンバーが乱戦になり、
そしてーー
暗殺部隊の男たちはそのまま殺害されてしまったー。
「ーーーーご主人様に歯向かうなんて許せないー
この者たちは処分なさい」
冷たい口調でリネーア姫が言うと
ヴィンセントは嬉しそうに「女神様の仰せのままにー」と、
頭を下げたー
リネーア姫が頭を悩ませていた
姫を崇拝する団体ー。
しかし、今の姫はその団体を護衛に使い、
自分と、”ご主人様”の身の周りを固めていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ー死罪よー
今すぐ、その者の首をはねなさい!」
”ご主人様”からの命令で
女性騎士のカミラに死罪を言い渡すリネーア姫。
「ーーひ、姫様!お待ちください!」
幼馴染のブルーノが叫ぶー。
だがー
スライムの命令通りにしか動かない
リネーア姫に、そんな言葉は届かないー。
身を守るためか、当初、リネーア姫の近くで
行動していたスライムは
今はリネーア姫のドレスの中や、胸元に
潜んでいることが多いー
今も足のあたりに巻き付くようにして
蠢いているー。
「ーーお前も、死罪になりたいの?」
リネーア姫が高圧的にブルーノに対して言い放つー
「ーーーくっ…」
ブルーノは今ここでこれ以上意見をしても
カミラ共々自分が死罪になってしまう、ということを悟るー。
「ーーーー」
カミラのほうを見るブルーノ。
カミラは首を横に振るー
”これ以上無駄なことをしてお前まで死罪になるな”と、
言うメッセージ。
「ーーー」
ブルーノは申し訳なさそうに頭を下げて
その場は引き下がるー
”僕に逆らうなんて許さないー
やっつけるんだ!”
スライムのそんな命令に、
リネーア姫は何の反対もすることなくー
そのままカミラを処断したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
姫の暴政が本格化していくー
”スライムにとって気に入らない者は死罪ー”
”スライムが贅沢をするために重税を民に課す”
”スライムをご主人様と崇める姫に従う者ばかりが
重用されていき、邪魔なものは遠ざけられる”
そんな、恐ろしい事態が次々と起きていくー
もはや、王国は”暴君による末期の状態”に
なりつつあったー。
スライムに命令されているのか、
連日美女を集めて酒に溺れて
遊びまくる夜を繰り返すリネーア姫ー
スライムはそんな姫の身体に巻き付くようにして
ご機嫌そうに身体を動かしているー
「ーくそっ…このままじゃー」
ブルーノは”状況が悪化する前に、あのスライムを仕留めておくべきだったー”と
後悔するものの、
”姫を正気に戻すことができれば”まだ何とかなるー、
と険しい表情を浮かべたー
③へ続く
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コメント
どんどん守りを固められて
スライム一匹を排除するのが難しい状態に…!
やっぱり最初にスライムを駆除しておかないと
ダメでしたネ~…☆
次回が最終回デス~!
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