<他者変身>変身おじさんⅡ(前編)

他人に変身する力ー…
それを手に入れたとある男のやりたい放題の日常ー。

ここにもまた”力”を手にしてしまったおじさんがいたー。

※「変身おじさん」の続編デス!
前作を知らなくても、特に問題はありません!

⇒過去シリーズはこちらからご覧ください!

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”他人に変身する力”ー

その力を手に入れて、欲望の限りを尽くす人々がいるー。

ここにも一人ー
そんな、男がいたー

「ーひひひひひひひひひっ~!!!
 あはははははははははァッ!」

休日の遊園地ー
遊園地内は、突然の出来事にどよめいているー。

一人のOLらしき女が、突然スーツを引きちぎり、
半裸状態となって、笑いながら遊園地の中を駆け巡り始めたのだー

動いている最中のコーヒーカップの敷地内に柵を飛び越えて入り込みー
呆然としている家族連れの乗客に、脱ぎ捨てた自分の下着を投げつけるー

最後にはほぼ全裸状態になってしまった彼女は、
嬉しそうに大笑いしながらー
そのまま遊園地を失踪しー、
姿を消したー

当然ー
通報されて、パトカーもやって来るー。

だがー
彼女は裏路地に隠れながら
はぁはぁと荒い息をしー、
ニヤニヤと笑みを浮かべていたー

正直、”逃げ場”はないはずだー

しかし、彼女は余裕の笑みを浮かべるとー
突然ー、眼鏡をかけたやせ細った男性の姿に
数秒のうちにして、変わったー

まるで、映画のように、一瞬にしてー。

「クククー」
普通に服も着ている状態の彼は、
何食わぬ顔で、裏路地から姿を現しー
”遊園地の痴女”で大騒ぎになっている
状況を見渡しながら、満足そうに
その場を立ち去って行ったー

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翌日ー

「ーー佐野原 葵(さのはら あおい)さんですねー」

遊園地で狂った行為を行ったOL、
佐野原 葵の元に警察がやってくるー

”今日はやっと休日ー”と、
のんびり過ごそうとしていた葵は、
突然の訪問者に、寝惚けた状態のまま「へ…?」と
困惑したような表情を浮かべるー。

「ーーど、どういうことですかー?」
葵が困惑した表情で浮かべるとー、
「ネット上でも大騒ぎになってるし、知らないとは言わせないぞ」と、
警察官の男が言うー

状況を飲み込めない葵ー。

昨日の遊園地の件はネットで大騒ぎになっているし、
それを見た葵の友達が慌ててLINEなどを大量に送っているー。

がー、
昨日は帰ってきてすぐに寝てしまい、
今日は日曜日ということもあり、遅くまで寝ていた葵は
”大変なことになってる”という状況を
全く把握することができていなかったー。

「ーー署まで、ご同行願えますか?」
”逮捕状”を手に、そう言い放つ警察官ー

「た、た、逮捕!?え!?なんでですか!? えっ!?
 何かの間違いです!」

葵の言う通り”何かの間違い”なのだがー
”変身おじさん”による悪事に
世間が気づくことなどできるはずもなくー
そのまま葵は”動かぬ証拠”を突き付けられて
身に覚えのない罪で逮捕・連行されてしまったー

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「ーーすげぇ…燃えてるぜー!」

昨日ー
”葵”の姿に変身して、痴態を晒した男ー、
深野 駿平(ふかの しゅんぺい)が、ネットを見つめながら笑みを浮かべたー。

彼はー
40代中盤に差し掛かった中年の男ー
眼鏡をかけて、不健康そうにやせ細っている容姿をしていてー、
”冴えないおじさん”というようなオーラを漂わせているー。

彼はこれまで、”特に面白味のない人生”を送ってきたー。
周囲がそう言っているわけではないー
彼自身、自分でそう会社の同僚にも言い放っているのだー。

しかし、最近は違うー。

会社の同僚から見ても、駿平は露骨に楽しそうになり、
ご機嫌になって、幸せそうなオーラを振りまいていたー。

年配の上司が「彼女でもできたのか?」と、
今の時代では場合によってはアウトになりかねない質問を
投げかけてしまうほどだったー。

だがー
駿平は、嫌な顔一つせずに、ご機嫌なまま答えたー

「ー彼女?
 そんなものより、もっとすげぇことですよー」

とー。

「ー?」

上司は首を傾げたー。

だがー、
駿平はそれ以上説明はしなかったー。
する必要もなかったー

言ったところで、どうせ誰も信じやしないー。

”ある日、家の中に紛れ込んできたカメレオンを食べたら”
他人を見つめて”その人になりたい”と念じるだけで、
その人になることができるようになったー…

などとはー…

駿平は、1ヵ月ほど前ー、
休日に家でのんびりしながら
録画した映画を見ている最中にー
ふと、家の中に”カメレオン”が紛れ込んでいることに気付いたー。

最初は”えっ!?何でカメレオンが家の中にー?”と
思ったもののー、
そのカメレオンを見つめているとー
何故だか急に”このカメレオンを俺は食べなくてはいけない”という
謎の感情が沸きあがってきたー。

本能に従い、駿平はそのカメレオンを食べたー。

そして、その結果ー…
今、手にしているこの”他人に変身する力”を
ゲットしたのだー。

「ーーーさて…とー」

駿平は、自分のデスクで何食わぬ顔で仕事をしながら、
今年入社した女性社員・奥森 園香(おくもり そのか)のほうを
チラッと見つめるー。

とても可愛らしく、愛想も良く、素直なことから
チヤホヤとされている園香ー。

だがー、以前、少し仕事のミスを注意しただけで、
こっちが悪者みたいな扱いをされてから、
駿平は、園香に対し、憎しみを募らせていたー。

「ーーーー次は、お前だー。滅茶苦茶にしてやるぜー」
駿平は、そんな園香の姿を見つめながら、
ニヤリと笑みを浮かべたー。

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”触り放題1分 500円”

駅前の裏路地で、
園香に変身した駿平は、園香の姿を使い、
金を荒稼ぎしていたー

「(クククー俺が変身しているだけとは知らずに
 ニヤニヤしながらおっさんが俺のおっぱい触ってる姿は
 実に滑稽だぜー)」

ニヤニヤしながら、園香の姿の駿平は
「はい~1分経過で~す!ありがとうございました~」と、
次の人を呼ぶー。

「ー(しっかり、適当に触らせとくだけで金を稼げるんだから
 ホント、たまんねぇよなぁー10人触らせれば5000円だし、
 20分もあれば、10人ぐらい簡単に回せるしー)」

駿平はー
”変身して勝手に人の姿を使いー”
”燃やす”ことが大好きだったー。

とんでもない事態を引き起こし、
その翌日に新聞やニュースでそれを確認するその瞬間がー
たまらなく興奮するしー、
笑いがこみ上げてくるー。

そしてー
それとは別にー
”こうして時々”お小遣いを稼いでいるー。

「ーーん?」
そろそろ1時間が経過しようとしていたタイミングだったー

園香に変身した駿平は、少し離れた場所にいる
警察官とおばさんが、こちらを指さしながら
なにか会話しているのを確認したー。

”通報されたかー
 まぁいいー十分小遣いは稼げたー”

そろそろ1万円に上ろうかと言う売上を手に、
園香姿の駿平は、ちょうど胸を揉んでいる最中だったおじさんを
蹴り飛ばしー、
そのまま売上を手に走りだすー

「あっ!待ちなさい!」
警察官が逃げ出した園香姿の駿平を追いかけ始めるー

”へへへー、さてと、この生意気な新人女も燃やしておくか”
そう呟きながら、
園香の姿のまま、駿平は、道行く男たちを
素早く物色して、すれ違いざまに次々と
キスをし始めるー。

誘惑できそうなおじさんを中心に、
キスをして、「あのお巡りさんを足止めして!」と叫ぶー

また一人、
また一人とキスを繰り返しながら、
騒然とする繁華街を駆け抜けていくー。

大半のおじさんは呆然としているだけだったが、
中には”園香”にキスをされたからだろうかー
園香姿の駿平の言うことを聞いて
警察官に対し「何があったんですか?」などと
声を掛けて時間を稼ぎ始めるおじさんもいたー。

「ーーへっへへへー」
路地に逃げ込んできた園香姿の駿平はー
そのまま”変身”を解除して、元の自分の姿へと戻ると、
静かに笑みを浮かべてー
”園香の姿で稼いだ”お金をそのまま自分の懐にしまい、
何食わぬ顔で歩き出したー。

警察官が慌てて走っていくのを見つめながら、
駿平は思わず笑みを浮かべるー。

「ーークククー どんなに走ったってー
 見つかりはしないさー…
 ”ここ”ではなー」

駿平がそう呟くー

そうー、
さっきまで胸を揉ませて荒稼ぎしていた園香はここにはいないー
何故なら、”元の姿”に戻ったのだからー

だがー、
”遠く”に行けば、”本物の園香”を見つけることはできるだろうー

何も知らない”本物”が、
まさか痴態を働いていたのが”偽物”だとは知らずに
警察に確保されるー

「ーーへへへへへ…
 あの得体の知れないカメレオン、食っちまってよかったぜ」

駿平はそう呟くと、今日も静かに自分の家に向かって
歩き出したー。

「ーーーーー…」
その最中ー、
ふと、スーパー銭湯の前を通りがかった駿平は
「ー女風呂でも入るか」と、周囲を見渡すと、
そのまま、偶然近くを歩いていた見ず知らずの若い女を見つめー
いつものように念じてその姿に変身するとー、
店内に入っていき、堂々と女風呂の方に歩いて行ったー。

当然ー

”誰も”駿平を止める人間などいないー。
周囲から見れば”通りすがりの女”に変身した駿平は
普通の女にしか見えないー

何も注意されないままー
堂々と、中へと進んだ駿平はー
”変身の被害者”とも言えるこの女の身体を堪能しー、
さらには堂々と女風呂の中を覗き、
満面の笑みを浮かべたー

あまりにイヤらしい笑みを浮かべているため、
周囲の何人かは「?」と、首を傾げたものの、
どう見ても身体は女性にしか見えないために
それ以上は何も言ってこなかったし、
何も言うこともできなかったー。

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「警察ですー」

駿平が勤務する会社の新人女性・園香の家に
翌日、警察がやってきたー。

今日も会社に向かう準備をしていた園香は
「え?」と、表情を歪めるー

友達から、”これ、園香?”と
ネットに上がった昨夜の”胸を1分揉み放題で500円”の
写真を見せられたものの、
当然、園香にはそんな記憶はないし、
園香本人もそんなことはしていないためー
”似てるけど、違う人でしょ”と、返信をしていたー。

しかしー
こうして警察官が実際にやってきたとなるとー
その不安は一気に増幅するー。

「ーーー…あ、あの…何かーー」
園香がそう言うと、警察官は
「昨日の夜ー、駅前で」
と、”揉み放題”のことを説明し始めたー。

「ーーー…そ、それはわたしじゃー…」
園香がそう言い放つも、
キスをしながら逃亡している園香の動画を
警察官に示されて、園香は表情を歪めるー

「え…なんで…!?わたし……」
園香は動揺した様子を見せながらもー、
すぐに部屋の奥へと移動したー。

「ーき、昨日、その時間は友達と話をしてました!」

そう言いながらー。

「話?」
警察官が首をかしげると、
園香は、確かに”揉み放題”が行われていた時間帯に
ネットで”映像付き”の通話を友達としていて、
その記録を警察官に見せつけたー

「ーー確かに…これが本当なら、駅前でこんなことを
 することは不可能だなー」

男性警察官がそう言うと、
女性刑事も「そうですね」と、頷くー。

「ーーーー…」

そんなやり取りがあったことをー
”人々に変身して”欲望の限りを尽くす駿平はまだ知らないー

「さぁ~て…今日はどいつの人生を壊すかなぁ」
そんなことを思いながら、ヘラヘラと会社に向かうー。

”今日も”
園香が出勤しているとは、夢にも思わずにー。

<後編>へ続く

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コメント

「変身おじさん」の続編デス~!

前の”変身おじさん”は最終回で死んでしまったので、
今回はまた別のおじさんが同じ能力を使い、
やりたい放題している状態ですネ~!

続きは(土曜日の執筆の都合上)来週の土曜日になりますが
気長に待っていて下さい★!

お読み下さりありがとうございました~!

コメント

  1. ムッシュ より:

    リクエストお応えありがとうございます。
    序盤から警察介入?前作を読み返すと表向きは全部内輪揉めだから不介入だったんだな。前作主人公なら園香を監禁したな。
    駿平は能力を手に入れてから間もないせいか手際が悪い。
    生き残れるか?すぐ消えるか?
    次回楽しみにしています。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!★
      どういたしまして~!

      今回のおじさんは、より無差別な感じなので、
      早々に騒動になってしまってますネ~!

      後先考えていない感じなおじさんがどうなるのか…、
      ぜひ続きも楽しんでくださいネ~!