<憑依>世界は俺のもの②~崩壊への道~

元々、人間そのものに対して疑問を
抱いていた男ー。

しかし”自分にはどうすることもできない”し、
法律を犯すような行動をするつもりはなかったー。

だが、そんな男が憑依薬を手に入れてしまいー、
決して表に出ることのなかったはずのー”世界征服”という欲望が
表に溢れ出し始めてしまうー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー破滅の女神を名乗る子の身元の確認が取れましたー」

”破滅の女神”を名乗り、
世界に宣戦布告をした少女・月美ー。

その日の午後には、
警察がその身元を特定していたー。

高校2年生の
長峰 月美ー。

普段の学校での振る舞いはどちらかと言うと
”優等生”に入る部類で、
家庭環境にも問題なし。
趣味は料理と手芸関係で、
月に2回程度、自分のアカウントで動画配信を
行っていたー。

ここ最近も特に変わった様子はなかったものの、
昨日、突如として学校を無断欠席して
自宅からも姿を消しー、
例の”破滅の女神を名乗って世界に宣戦布告をする”という
動画を投稿したのだー。

「最近の子は何を考えているんだー」
年配の刑事が戸惑いの表情を浮かべるー

「いやいや、最近の子でも普通、こんなことしませんよ」
若い刑事が笑いながら言うー。

もちろんー
”破滅の女神を名乗って世界に宣戦布告”する動画を投稿しただけでは
こんなに騒ぎにならないし、
月美ぐらいの規模のチャンネルでそんな動画が出ても、
話題にすらならないだろうー。

しかし、問題はー
”月美が動画内で示した10人”が、動画で宣言した通り、
30分以内に全員死亡した、ことだー。

しかも、凶悪犯罪者や、
国際的な犯罪組織のリーダー、
独裁者など、”絶対に30分で全員命を落とすことなどあり得ない”
組み合わせが、死亡しているのだー。

月美が何かしたとしか思えないー。

いやー
月美のような少女にそんなことができるはずはないのだがー
少なくとも、何か関与していることは確実だったー

「ー先輩!例の女の第2弾の配信が始まりました!」
そう叫ぶ刑事ー。

「なんだと?すぐにスクリーンに映せ!」
年配の刑事がそう叫ぶとー
”破滅の女神”を自称する月美が、笑みを浮かべながら
カメラの前に立ったー。

ここにいる刑事たちも、
無関係の人々も、
この少女も”被害者”であることは知らないー。

憑依薬を手にして、世界を作り替えるために
世界を支配することを決めた聖人に”器”として
憑依されてしまった被害者であることをー。

「皆さんー、これでわたしの力は信じてもらえましたか?」
少し興奮した様子で配信を始める月美ー

「ーふふふふ…先ほどの配信でわたしが宣言した10人の
 死亡が確認できたと思いますー。

 このようにー
 犯罪に関係する人間ー、悪政を行う人間ー
 その全てを、わたしは”消去”していきますー

 人間の世界はいわばカビだらけー。
 カビは取り除かなければー繁殖しますー

 だから、このわたしー
 破滅の女神が、全て消去しますー。

 人間は愚かー
 無駄な争いー
 終わらない悪事ー。

 今、それを変える時が来たのですー」

月美はそれだけ言うと、
悪そうな笑みを浮かべながら言い放ったー。

「ー世界中の犯罪者ー
 世界中の悪政を行う人々ー
 世界中の悪徳企業ー

 それら全てを粛清しますー。

 皆さんからの情報提供も受付しているのでー
 表示したページに、ぜひ情報提供を、お願いします」

月美はそれだけ言うと、
あざといポーズと表情を浮かべながら
「ー世界を良くするために、皆さんの協力、お願いします♡」と、
視聴者に”犯罪者などの情報提供”を呼びかけたー。

「ーーそれでは皆さんー
 ”本番”のスタートですー」

月美はそれだけ言うと、そのまま配信は終わったー

「ーーーー…神内ー…くそっ!」

その配信を仕事を終えて帰宅した同期の聡一も
自宅で見つめていたー。

配信しているのは女子高生だがー、
あれはきっと聖人に憑依されている子だー。

聡一はそう思ったー。

だが、あの少女が今、どこにいるのかも
分からないし、どうすることもー

「ーいや…待てー」
聡一は、”月美”が、聖人のスマホを持っていることを信じて、
必死に連絡を入れ始めたー。

「くそっ!繋がらないー」

それでも、聖人を止めようと繰り返し電話を続ける聡一。

しかし、時間ばかりが過ぎていくー

やがてー、
パソコンに表示したツイッターの画面に

”破滅の女神”が、トレンドしているのが確認できたー

さらにはー

”草林社長事故死”
”犯罪組織壊滅”
”国家消滅”

恐ろしいワードがトレンドに次々と上がり始めたー。

「ーおい…おい…おい、やめろよー…
 冗談じゃないぞ!」

聡一は、事が想像以上に大きくなり始めていることに
危機感を抱き、なんとか聖人に連絡を取ろうとするー。

ニュースをつける聡一。

ニュースは既に、
先程運転中に事故死した、ブラック企業と最近騒がれていた
会社の社長・草林の事故を伝えているー。

さらには、国際的な犯罪組織ビー・レックスの
リーダーが突然拳銃自殺したニュースや、
独裁を行っていた未知の島国が自爆して消滅したニュースなども
報じられているー。

「ーーおい………やべぇよコレー」
聡一は、聖人に憑依薬を渡したことを死ぬほど後悔しながら、
呆然とした表情を浮かべることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー…!」
聖人に憑依されている月美が、意識を取り戻すー。

だが、月美の身体は手錠で繋がれた状態ー。

「ーーーーお、目を覚ましちゃったかー」
そこに”憑依”を終えて、戻ってきた聖人が
姿を現すー。

たった今も、
聖人は、数か国の独裁者を憑依で始末してきたところだったー

既に当事国では大混乱が始まっているー。

「ーーー…ひっ…!?こ、ここはー…?」
月美が混乱しているのを見て、聖人は
「あぁ、いや、気にするなー」と、笑うと、
そのまま手錠を解いてー
再び月美に憑依したー

「ーふぅ…身体をキープしておくのは大変だな」
月美を再度支配した聖人は、
首を左右に動かしながら、椅子から立ち上がるー。

月美は”表向き”恐怖の対象となるように
乗っ取った身体だー。

普段はこの身体で行動していればー
少なくとも世間は
”起きている出来事はこの女の仕業”だと思うだろうしー
万が一何かが起きても、
月美の身体を捨てればいいー。

それにー
聖人自身が世界に宣戦布告するよりも、
こういう美少女が宣戦布告しているほうが
聖人が個人的にゾクゾクしたしー、
”まるで天使による天罰”のような雰囲気が出てー
人々に与える恐怖も強いと聖人は思っていたー

「ー愚かな人間が多すぎるから、
 どんどん続けて行かないとなー」

月美はそう呟くと、
再び椅子に座りー、
自分の身体に手錠をかけて、
そのまま月美の身体から抜け出したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーうっ…」
ブラック企業の社長に憑依した聖人はー
憑依した直後ー、
容赦なくビルの窓ガラスを突き破ってー”自殺”したー。

「ーあっ…!?」
砂漠地帯に存在する国の悪徳政治家に憑依した聖人はー
持っていた銃で、そのまま自殺したー。

「ーー!?」
国際的な犯罪組織の幹部に憑依した聖人はー
憑依した直後ー、
交差点に笑いながら飛び出していき、その命を奪ったー。

「ーーー…あぅっ…」
男を手玉に取って金を巻き上げていた女詐欺師に憑依した聖人は
嬉しそうに胸を揉みながら、台所のキッチンで自分を刺して
そのまま自殺したー

「ーーすごすぎるぜー!」
月美の身体に戻ってきた聖人は笑うー

「これで、この世界を消毒できる!!!」
月美は狂ったような笑みを浮かべながら
大騒ぎになっている社会に対して”配信”を始めたー

「ー今、この世は
 歪んだ人間によって”ばい菌”だらけの世界になっていますー

 わたしは、この世界を”消毒”しているのですー」

月美がクスクス笑いながら言うー。

「ーわたしは今までずっと
 ”この世界は愚か”だと思ってきましたー

 けど、そうは思っても何もすることはできないー
 ”凡人”にできることは
 この世界ではあまりにも限られているー

 でもー
 わたしは手に入れたー
 この世界を支配して、新しい世界に作り替える力をー」

月美はそこまで言うとにっこりと笑ったー

「”何も悪いことをしていない”皆さんは安心してくださいねー。
 わたしが”消去”するのは、悪い奴だけですからー」

そしてー
動画の最後を悪魔のような笑みで締めくくるー

「ー逆にー”心当たりのある皆さん”は
 覚悟しておいてくださいねー
 
 ”破滅の女神”であるこのわたしが、
 ”消去”してあげますから」

悪女のように笑いながら動画を終える月美ー。

その配信は終わりー
その直後からも、恐ろしい速度で、
聖人は、世界各国の悪人や権力者を”処分”していくー。

「ーーなんてことだー」

警察は呆然としながらも、月美の行方を追うー。

しかし、聖人に憑依された月美は、
憑依能力を駆使して、手に入れたとある場所に潜伏していて
警察でもなかなか居場所を突き止めることができないー。

更にはー
ようやくたどり着いた警察官も、すぐに”憑依”されてしまい、
あっという間に”処分”されてしまうー

「ーーふははははは…世界は、世界は俺のものだ!」
月美はニュースを見つめながら嬉しそうに叫んだー。

「ー愚かな人間を全員処分して、
 ちゃんとしたやつらだけの新しい世界を作るんだ!」

聖人が憑依薬を手に入れて
数か月が経過したころにはー
世界中で相当な数の人間が”処分”されていたー。

そんな中ー
聖人に憑依薬を渡してしまった会社の同期ー、聡一が
ようやく月美に憑依した聖人の居場所を見つけて、
その場所にたどり着いていたー

「ー神内!」
聡一が叫ぶと、
月美に憑依したままの聖人が笑みを浮かべるー

「ーー久しぶりだなー」
月美の言葉に、聡一は、
「お、お前…何てことをー」と、
震えながら呟くー。

だが、月美は全く悪びれる様子もなく
「すごいだろ?
 ”破滅の女神”による神罰だと、世界中で騒ぎになってる」
と、モニターに表示したニュースを指さしながら笑ったー

「ーーー…ふ、ふざけるな!
 じ、神内!お前…自分が何をしているのか、分かってるのか!」

聡一が必死に叫ぶー。

聡一の表情には”怒り”が浮かび上がっているー。
それを見て、月美は少しだけ笑うと、

「人生なんて生まれてから死ぬまでの罰ゲーム…
 この世は理不尽だって、前にも言っただろ?

 でもなー
 争いを繰り返す者ー、権力に溺れる者ー、
 己の欲望を満たそうとする者ー、犯罪に手を染める者ー

 そういうゴミを全部処分すればー
 世界も、ちょっとはよくなると思うんだー」

と、言葉を口にするー

「ーバ…バカなー…そ、そんな小学生みたいなことを!」
聡一が困惑して叫ぶー。

確かに世の中は理不尽かもしれないー
でも、聖人のやり方はー

「ーー…たった一人が”憑依”の力を手に入れるだけでー
 世界をこんなに変えることができるんだー

 だったらー、やるしかないだろ?」

笑う月美ー。

聖人に話が通じるとは思えないー。
聡一は相談すると、ナイフを手に、月美の方に向けたー。

「ー!」
一瞬驚く月美ー。

「ーこんなことになったのは、俺がお前に
 憑依薬を渡してしまったからだー

 責任を取って、お前を止めて、そのあとに俺も死ぬ!」

そんな覚悟の表情を浮かべる聡一を見て、
月美は笑みを浮かべてー
その場で突然意識を失ったー

「ー!?」

聖人の声が聞こえるー

”ー憑依能力を手に入れた俺は無敵だー
 例えばそう、お前の身体に今から憑依して
 自殺することだってできるしー
 ー半殺しにすることだって、できるー”

「ー…!!」

聡一は表情を歪めながら
「やっ…やめ 」と、叫んだが、そのまま聖人に
憑依されてしまいー、
数分後、近くのビルから飛び降りさせられてしまったー

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

だがー
聡一は、一命を取り留めー
数年間眠りについた末に、
奇跡的に意識を取り戻していたー

しかしーーーー

「ーーーーー………なんだ……これーーー」

意識を取り戻して、
聡一が目にしたのはー

聡一が意識を失っていた数年の間にー、
聖人が憑依と破壊の限りを尽くした結果ー

”文明が崩壊した世界”だったー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

もう手遅れなところまで進んでしまった感…!

最終回で逆転はあるのでしょうか~?

今日もお読み下さりありがとうございました~!

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