<憑依>☆600万アクセス記念☆愛の報復④(完)

☆憑依空間600万アクセス記念作品☆!

※本日の通常更新は既に午前中に行っています!
 通常の新作はこの1個前の記事を見て下さいネ~!

”好きな子に憑依した親友”との
奇妙な関係の先に待つ運命は…!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーほ、星村さんー!」

麻奈美に指定された場所にやってきた恭介ー

そこには、高校時代とはまるで別人のように
おしゃれな麻奈美と、
麻奈美によって、椅子に縛り付けられた美里の姿があったー。

「ーみ、美里!」
恭介が美里のほうを見てそう叫びー
美里の拘束を解こうとするー。

麻奈美にとって、美里はターゲットではないのか、
特に何もしてくる様子はなくー、
その様子を見つめながら静かに呟いたー

「みさと…」
とー。

「ーー…ほ、星村さん!な、なんでこんなことするんだよ!」
恭介がそう叫ぶー。

”幹夫”と呼んでもよかったが、
憑依の件とは無関係の美里がいる手前、
そうは呼ばなかったー

「ーーほしむらさんー…
 ふぅん…」

麻奈美は不満そうにそう呟くと、
「ーわたしのこと、ずっと”麻奈美”って呼んでくれないのにー
 その女のことは、美里って呼ぶんだ?」
と、自虐的な笑みを浮かべながら恭介のほうを見つめるー

「な…な…なんだよ…
 だ、だって…星村さんはー!」

”中身は幹夫だろ?”と言いたかったが
それは今は言えないー。

美里の拘束を完全に取り払うと、
美里は目に涙を浮かべながら
「ち、ちゃんと話し合ったって言ってたよねー?」と、
不安そうに呟くー

「ーは、話し合ったよー…
 そ、それにー」

恭介は
”このままでは”元々の彼女”とちゃんと話し合わずに
 彼女を乗り換えした嫌な男だと思われる”と思いながら、
「ーほ、星村さんはーち、ちょっと普通の関係とは違うんだー」と、
困惑しながら、美里に言い放つー。

美里は納得してない、と言いたげな表情で
怯えた視線を麻奈美のほうに送ると、
「ーねぇ、わたしのことちゃんと”女”として見てよ!」
と、麻奈美が不満そうに、恭介に対して話しかけるー

「ーそ、そんなこと言われたってー」
恭介はそう呟くー。

麻奈美と一応は付き合い始めてからも
恭介の中には常に、ある思いがあったー。

それは”身体は好きな子”の身体であったとしてもー
”中身”は、親友の幹夫である、ということー。

幹夫のことも”好き”だー。
だが、それは”ライク”であり、”ラブ”ではないー。

「ーーー…親友じゃ嫌!どうしてわたしを
 麻奈美として見てくれないの!?」

麻奈美がそう叫ぶと、
美里は「な、なんなの…ねぇ…?」と、
怯えながら恭介に対して言い放つー。

恭介は「巻き込んでごめんー」と、だけ言い放つと、
そのまま美里を逃がそうとするー。

「ー逃がさないー…!
 わたしから、恭介を奪うなんて、許せない!」

麻奈美は、美里のほうを睨むと、
小さな刃物を手に、美里に襲い掛かろうとするー

「に、逃げろ!」
恭介は慌てて美里に対してそう叫ぶと、
麻奈美を何とか取り押さえるー。

「ーー…邪魔をしないで…!
 恭介を惑わすあの女をーやっつけないと…!」

麻奈美が怒りの形相で、恭介にそう言い放つー。

恭介は、そんな麻奈美の顔を見て、
強く心を痛めたー

”「ーその…わたし…今は彼氏とか考えられなくてー」”

高校時代ー
恭介が告白した時の麻奈美とはー
まるで、違う表情ー。

本当の星村麻奈美だったら、絶対にこんな表情は
しなかっただろうー、と確信できるような
嫉妬に歪んだ表情ー。

「ーーーみ…み…見れるわけないだろ!」
恭介が美里を逃がすために麻奈美を押さえながら叫んだー

「ーーー…!」
麻奈美が目を見開くー

「ーーだってー俺はー…星村さんの中身が、
 幹夫だって知ってるからー…!

 もちろんー
 あの時、落ち込んでた俺を励まそうとしてくれたことには
 感謝してるー

 でもー…でもーー…
 俺が…俺が好きなのは
 星村麻奈美だったんだよー!

 身体と中身ー、両方が揃わなきゃー
 俺の好きだった星村さんじゃないんだよー

 身体だけでも、中身だけでも、ダメなんだー」

恭介は、麻奈美に憑依した幹夫の勢いに押されてー
そして、”心配を掛けた結果、幹夫が麻奈美に憑依する”ということを
起こしてしまった責任を感じ、
ずっと付き合ってきたー

それでも、麻奈美のことを”麻奈美”と呼ばなかったのはー
中身が幹夫であることや、”本当の星村さんの意思に反して恋人同士になっている”
ことに罪悪感を感じていたからー。

だからこそ、二人きりの時は幹夫と呼んだり、
人前では”星村さん”と呼びー、
麻奈美と呼ぶことはついに最後までなかったー。

「ーーー幹夫じゃなくて…麻奈美として見てほしいの!
 女の身体になって、わたし、わたしー…」

麻奈美が目に涙を浮かべながら言うー

”憑依した人間”の感情は、恭介には分からないー

身体が女性になったことで、
恭介に対する思いや感情ー
そういうものにも変化が現れているのかもしれないー

「ーーー無理だよー…
 俺にはーーできない
 
 だってー……本当の星村さんは、俺と付き合えないって言ったんだからー」

恭介は、憑依された麻奈美と付き合い始めてからも
一度もエッチなことはしていないし、
自分から周囲に麻奈美を彼女と称したこともないー

幹夫が麻奈美の身体から抜け出せなくなったことにも
罪悪感を感じ、その結果、付き合いは続けていたもののー
どんなに麻奈美から誘われても、身体の関係を持つことも
絶対にしてこなかったー

「ー頼むよ幹夫ー…
 ーーまだ、ちゃんと、自分が幹夫だったこと、覚えてるだろ?」

恭介が頼み込むように言うと、
麻奈美は「ーーー……分かってるよー」とだけ呟くー。

女の身体に影響されて、あらゆる考え方や感覚は変わったー
けれど、麻奈美本人の意識が戻ったわけではないし、
幹夫が麻奈美に吸収されているわけでもないー

自分が幹夫だということはちゃんと理解しているし、
幹夫としての記憶も全て残っているー

「ーーー…でもーーー…お前だって分かるー!
 女の子の身体になるとー
 愛されたいって思っちまうんだよ!

 いいじゃないかー!
 俺をーわたしを麻奈美として見てよ!!」

麻奈美の言葉に、恭介は「それはできないー」と、
首を横に振るー。

「ーー俺にはーーーできない」

不器用なのかもしれないー。
いっそのこと、”麻奈美”のことを
本人の望むように、完全に”星村麻奈美”として見ていればー
最初から美里のことを好きになったりはしなかったかもしれないし、
麻奈美に憑依した幹夫も苦しまなくて済んだのかもしれないー

いやー、
そもそもー

「ーお前の人生を狂わせて、本当に悪かったー」
恭介は、その場で麻奈美に対して土下座をしたー。

「ーーーー…」
麻奈美が顔をピクピクさせながら、恭介を見下ろすー

「ー俺が、星村さんに振られてー
 あんな風に落ち込んだりしてなければー
 いつまでもウジウジしてなければー

 幹夫が憑依薬なんてものを使ってそんな風に
 なることもなかっただろうしー、
 星村さんだって、人生を奪われることはなかっただろうしー、
 幹夫の両親だって、お前がいなくなったと思って
 悲しむ必要だってなかったーー

 全部、全部俺のせいだー」

恭介はそれだけ言うと、
歯ぎしりをしながら呟いたー

「ーーー…俺を殺して気が済むならー
 殺してくれー」

とー。

「ーーー…ーーーー……」
麻奈美は、土下座しながら、
そう呟いている恭介のほうを見つめながら
静かに口を開いたー。

「ーーー…違う…!ちがうちがうちがうちがうちがうちがう!!!
 ちがうぅぅぅうううう!!!」

麻奈美が顔を真っ赤にして、
怒りの形相を恭介に向けるー

「ーわたしが欲しいのは謝罪じゃない!
 恭介の土下座でもない!
 恭介の命でもないー!

 わたしは、わたしは、
 恭介に女として見てほしいのー!

 星村さんじゃなくて、
 幹夫じゃなくて、
 麻奈美って呼んでほしいのー!」

麻奈美の言葉に、
恭介は土下座したまま、
「それはできないよー…」と、悲しそうに呟くー

「ーできる人もいると思うー
 でも、俺には”親友が憑依している女の子”を
 本当の彼女として見れないー

 俺には、どうしても、できないー」

恭介がそう言い放つと、
麻奈美は手を震わせながら
「うああああああああああああああっ!」と、絶叫して
頭を抱えながらその場に蹲ったー

”親友”としての感情に
”女の身体”を手に入れたことで、狂った感覚が混じり合いー、
麻奈美はー、幹夫は感情を抑えきれなくなっていたー

「ーー嫌だ…嫌だ…嫌だー…嫌だ…うぅぅぅ」
髪がボサボサになるほどに頭を抱え込んで、
その手を不気味に動かす麻奈美ー。

恭介はどうしていいか分からずー
麻奈美に言葉を掛けようとしたー。

その時ー、
先に逃がした美里が警察に通報したのかー
数名の警察官がやってきて、
麻奈美は取り押さえられたー

奇声を発する麻奈美はー
目に涙を浮かべながらー
パトカーに押し込まれるまでの間ー
ずっと泣きじゃくっていたー。

「ーーー……全部、俺のせいだー」

恭介は、連行されていく麻奈美を見つめながら
呆然とそう呟いたー。

幹夫が自分の身体を失ったのもー
幹夫がこうなってしまったのもー
麻奈美が人生を奪われてしまったのもー
普通に生きていれば多分逮捕されることなんて
なかったであろう麻奈美が逮捕されてしまったこともー

憑依された麻奈美の告白を受け入れた時のことを恭介は思い出すー。

”時間がかかるかもしれないけど、それでもいいか?”

中身は幹夫だからー、
これから先もずっと”本当の彼女”としては見ることができないかもしれない、
と、確かにあの時、念押ししたはずだー。

そしてー

”いいよいいよ!半分彼女で半分親友みたいな感じでさ!”

と、麻奈美は答えているー

でもーー
現実はそんなに簡単なものじゃなかったー
と、いうことなのだろうかー。

「ーーーーー……やっぱ、全部俺のせいだー」
恭介はそう呟き、寂しそうに夜空を見上げたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからー…

美里とは別れることになったー

「ーーごめんなさい」
美里は、そう言ったー

高校時代、恭介の心に深く突き刺さった
6文字の言葉ー
憑依される前の麻奈美に言われた、
たった6文字の言葉に、
恭介の心は再び、悲鳴を上げたー

けれどー
美里の気持ちは理解できるー

”美里から見れば、恭介の元カノ”が、
あんな風に美里を襲撃したのだー。

美里からすれば怖いだろうしー、
”麻奈美との関係はちゃんと解消した”と
恭介が言ったのに、あんなことが起きれば
恭介に対する不信感を抱くのも当然だー

「ー俺の方こそ、ごめんー」
恭介は、美里に麻奈美のことを全て話そうとしたー。

だがー、別れを告げられた以上、
これ以上、美里を困らせても仕方がないと考えなおしー、
麻奈美のことは、これ以上語らなかったー

「ーー巻き込んで、本当にごめんー」
恭介はそう言い放つとー
”過去の過ち”を繰り返さないようにと、
今回はー、落ち込んだ様子を周囲に見せることなくー、
出来る限り普段通り振る舞ったー

また、幹夫のような者を出さないためにー
また、麻奈美のような憑依される被害者を生み出さないためにー

もちろん、幹夫のような考えに至る友人は、
まず、いないだろうー。
だが、可能性は0じゃないー。

だから、今回はー
美里に振られて辛いけれどー、
明るく振る舞ったー

誰も、これ以上、傷つけないためにー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

深呼吸をする恭介ー

麻奈美が先日、釈放されたー。

”麻奈美を”100パーセント麻奈美として”見ること”はできないー。
身体は麻奈美でも、中身は幹夫。
その事実は変わらないしー、
”本当の麻奈美に振られている”からー、
”100パーセント彼女として”見ることもできないー

それは、変わらないー

でもー

星村さんじゃなくて、
幹夫じゃなくて、
麻奈美って呼んでほしいのー!

「ーーー麻奈美って呼んであげることぐらいはー…できるかー」

恭介は、そんな風に呟きながら、
麻奈美との待ち合わせ場所に向かったー

仮に幹夫が誰かの身体を奪ったのではなく
”女体化”でもしたのであればすぐに受け入れられたのかもしれないー

けれどー”他人の身体を奪った”という事実がー
どうしても、恭介の中には引っかかり続けているー

しかしー

中身が幹夫でもー
本当の彼女にはしてあげられなくてもー

”女の親友”として見る努力はーー
これから、していこうとー
恭介は決意していたー。

「ーーーーーーえ」

だがー
”再開”した麻奈美はー
髪を短く切って、まるで男のような服装で、
恭介の前に姿を現したー

「ーーー…えーーーま…麻奈美…だよな?」
恭介がそう言うと、
まるで”男装”した麻奈美が少し恥ずかしそうに呟いたー

「ーお前が…俺のことどうしても、そういう目では
 見れないみたいだしー
 逮捕されたあと、色々考えてー
 …まぁ…親友のお前をこれ以上苦しめるのはアレかなって思ってー

 …だから…いいよ、幹夫でー
 これからも”親友”としてよろしくなー」

麻奈美が男言葉を使うことに抵抗があるのか、
ぎこちない口調で言うと、
恭介は「ま…麻奈美ー」と、呆然とした様子で呟いたー

「ーな、なんだよー
 今更、麻奈美って呼ばれてもー
 
 もう…俺は決めたんだー
 身体は女だけど、お前をこれ以上苦しめないために
 男として生きていくってー」

麻奈美のその言葉にー
恭介は「ーえ…お、俺も…麻奈美のこと、女として見ようと思ってー」
と、呟いたが、それ以上はもう口にしなかったー。

”また”
すれ違ってしまったー。

ようやく、麻奈美に憑依した親友・幹夫のことを
女として見て行こう、とそう決意した矢先ー
久しぶりに再会した親友は”男”として生きていく決意を
してしまったー。

「ーーーこの前は…悪かったなー
 巻き込んだあの子にも、本当に悪かったー」

麻奈美は”ぎこちない男口調”でそう謝罪の言葉を口にすると
恭介は「も、もういいよー大丈夫だからー」と首を横に振りながら答えたー。

”好きな子に憑依した親友”と
どう接していけばますます分からなくなった恭介ー

「ーーー」
すっかり無表情になってしまった”男装した麻奈美”を見て、
恭介は思うー。

幹夫の側も、
どうしていいのか、分からないのかもしれないー。

麻奈美に、幹夫に、美里ー
色々な人を傷つけてしまったー

「ーーごめんなさいー」
恭介は、麻奈美の後ろ姿を見つめながら
そう呟くー。

”自分のせいで、親友に乗っ取られることになってしまった麻奈美ー”

どんなに謝ってもー
どんなに謝罪してもー
きっと、許されることはないー

親友の笑顔を取り戻すことー
麻奈美に死ぬまで謝り続けることー

恭介はその2つの決意を胸にー
これからも”麻奈美に憑依した親友”から
逃げずに向き合っていくことを、決意したのだったー。

おわり

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コメント

600万アクセス記念小説でした~!☆!
ここまでアクセスが増えるなんて、
最初は全く予想もしていなかったので、
いつも毎月のアクセス数を確認する都度、
びっくり&感謝の気持ちでいっぱいデス~!

今後も変わらず、皆様に色々なお話を
お届けしていきますので、
ぜひ楽しんでくださいネ~!

次は700万を目指して頑張ります~!
ありがとうございました~!

PR
憑依<愛の報復>

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