”30分間の間、彼女の豹変に耐えきることができれば”
100万円を手にすることができるー。
そんな企画に挑戦する大学生ー。
かつて破滅したカップルと同じ道をたどるのかー、
それともー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ー押したら、100万円手に入らないじゃん!」
俊也がそう言い放つー。
セーラー服姿の”憑依された亜優”は、
”こんなモテなさそうなやつ、3分でギブアップさせてやるぜ”
と意気込んで誘惑作戦を行ったものの、
あっさりと拒まれてしまいー、
爪をガリガリと齧っていたー。
「ー押してくれないの?」
甘い声を出して、困ったような表情を浮かべる亜優ー。
「ー押すわけないだろ。僕たちの100万円なんだから」
俊也が堂々とそう言い放つー
「チッー」
亜優は険しい表情を浮かべて
”こいつにはこういう手は通じないってことかー”と、
表情を歪めるー
スタジオに表示されている残り時間の
カウント表示を見つめる亜優ー。
”26:23-”
残り26分23秒ー
”3分でカタをつけるつもりだったのにー”
少し不満そうにしながらも、
亜優は「そっかそっか」と、半笑いを浮かべると、
「ーじゃあ…カメラの前でおっぱい揉んじゃおっかなぁ~?」
と、俊也のほうを見つめるー
「ーーー」
少し顔を赤らめる俊也ー
「ーわたしの痴態が全国に放送されちゃうかもよ~?
ふふ、どう?ボタンを押す気になった?」
亜優が脅すような口調で言うー。
「ーー……ホントに、すごい豹変だなぁ…」
俊也は少し顔を赤らめながらそう呟くと、
「ーでも」と、少し咳払いをして
「ボタンは押さないよ」と、笑みを浮かべたー。
「ーー”くそ、なんだこいつー以外と頑固なやつだな”」
亜優は、不満そうにそう呟くと、
「ーへ~~じゃあ、仕方ないね」と、呟きながらー
「そうだなぁ…」と、スタジオ内を見渡すー。
収録スタジオの観客としてやってきていた男の一人を
笑みを浮かべながら指さすと
「こっちに来なさい」と高圧的な態度で手招きをするー。
いかにも悪そうな男が「俺か?へへ」と言いながら
スタジオに降りて来ると、
「ー今からわたし、この人とエッチなことしちゃうけど、
本当にいいの?」と、亜優が笑うー。
「ーーー……100万円のためなら」
俊也が頷くー
「ーーへぇ~~ひっど~い!
彼女が他の男とエッチなことしてもいいんだぁ?」
亜優はそれだけ言うと、
「なら望み通りやってやるよ」と、
急に笑顔を消して、怒りの形相で、
観客の男のほうを見つめたー。
「ーほら、さっさとズボンを脱げよ
あいつにフェラを見せつけてやる」
亜優が小声で男に指示をすると、
「へへー」と男は笑うー
「ーー豹変にも未だ狼狽える様子を見せない
チャレンジャー!
彼女の豹変にも、動じないその姿勢が
どこまで続くのか!」
MCの梶川がそう叫びながら、
スタジオの様子を見つめるー
「ーーー手こずってるじゃないかー…ククー」
スタジオの様子が映し出されたモニターを見つめながら
”以前”憑依されたバニーガール姿の咲奈が
笑みを浮かべるー。
「ーーふふふっ どうー
彼女のフェラしてるのを目の前でみるのは?」
スタジオでは、
亜優がイヤらしい笑みを浮かべながら
俊也にそう言い放つー
「ードキドキするね」
俊也の言葉に、亜優は「でしょ~?」と、笑うとー
「ボタン、押せばー 収録が終わったあと、いくらでもしてあげるー」と
ニヤニヤしながら囁いてー
唇をイヤらしくペロリと舐めてみせるー
「ーいや、遠慮しておくよ」
俊也は笑いながらそう答えたー
「ー”何があっても動じないってかー?”」
亜優に憑依した男は次第にイライラし始める。
「こうなったらー…」
亜優は男にキスをするように命じると、
俊也の前で舌を絡めながら激しいキスを見せ付けるー
「ーほらほらほら!わたしにこんなことさせちゃって!
そうまでしてお金が欲しいの!?
この金の亡者!!!」
亜優が罵倒しながら、観客の男の一人と
エッチなことをひたすら繰り返していくー。
それでも俊也は反応を示さずー
亜優は残り時間のカウントのほうを見つめるー
「ー15分ー」
半分が過ぎたー。
”くそっ…なんだこのガキー
思ったよりもしぶといじゃねぇか”
亜優は、そう心の中で呟くと、
「ーボタン押さないなら!このおんーー…いや、
わたしに中出ししてもらうから!」と、
観客の男の方を指さして叫ぶー。
「ーーそんなことしたらー…
困るのは亜優じゃないか」
俊也が苦笑いしながら言うー。
「目の前で彼女が中に出されてもいいの!?」
亜優は信じられない、という様子でそう叫ぶもー
俊也は「100万円は、必ずゲットするから」と、
それだけ答えたー。
”くそっ!この方向じゃダメってことかー?”
彼女が目の前で何をされようとも
”絶対100万円を諦めないマン”と化している俊也に
ボタンを押させることは無理そうだと判断した男は、
スタジオの脇に控えているスタッフに向かって叫んだー
「ーおい!ナイフ持ってこい!」
とー。
「お~っと、普段は優しそうな彼女から
恐ろしい言葉が~!
いったい、何をするつもりなんだぁ~?」
MCの梶川がハイテンションに叫ぶー。
「ーーー何をー?」
俊也が驚いていると、
ナイフを手にした亜優はそれをペロリと舐めてー
突然、自分の指を切りつけたー
亜優の指から血が流れ始めるー
「ほら、ボタン押しなよ」
亜優が血を流しながら笑うー。
「ー押さない」
俊也が堂々と言い放つー。
「ーーわたし、どんどん傷ついちゃうよー?」
そう言いながらセーラー服をナイフで切り刻んでいきー
下着が見える状態になった亜優はー、
自分の太腿にも傷をつけながら笑みを浮かべたー
「ほら、ボタン…押せよ」
亜優が笑顔を浮かべながら言うー
「ーー押さないよ」
俊也は首を横に振るー。
その言葉に、亜優はナイフを震わせながら
「押せって言ってんだろ!!!」と、
声を荒げるー。
「ーーー悪いけどー
僕は絶対に押さないよー」
俊也はそう呟くー。
「ーーーーっっ…」
亜優は舌打ちをすると、
自分の首筋にナイフを向けて笑みを浮かべるー
「だったら、わたし、死んじゃうかもよ?」
亜優は自分の首筋を向けながら
ニヤニヤと笑みを浮かべるー。
「ーーケッ」
別室のモニターで会場の様子を見つめていた咲奈は
呆れた様子で笑うー。
「あんな大口を叩いておきながらー、
結局”俺”の真似じゃねぇか」
呆れ顔の咲奈ー
かつて、咲奈に憑依した男が使った戦術ー。
確かにこれをすればほぼ確実に勝利できるだろうー。
「ーー相変わらず、芸のない男だー」
咲奈はあきれ果てた表情で、椅子から立ち上がると、
「ーもう勝負は決まっただろー。俺はもう行くー」と、
”自分の仕事”をするために、他のスタッフに任せて
その部屋を後にしたー。
「ーーーーーそんなことしても無駄だよー」
会場では、自分の首にナイフを向けた亜優に対して、
俊也がそう言い放っていたー。
「ーー本当に、本当に死んじゃうよ?」
亜優は破れたセーラー服姿で、そう言いながら笑みを浮かべるー。
首筋に少しだけ傷をつけて、
血を出して見せるー
それでも、俊也は動じないー
「ーだって、これは番組撮影なんだからー
人を死なせるようなことをするはずがないし、
亜優だって、いくらスタッフから”豹変する演技”を
するように言われてるんだとしても、
自殺するようなことをするはずがないー
だから、僕は押さないー。
いや、ギブアップのボタンを押す必要がないー
30分押さなければ、何も起きないんだからー」
俊也は少し遠慮がちに、
けれどもハッキリとそう言い放ったー
”あぁ、そうか、こいつはバカなのか”
亜優に憑依している男はそう思ったー
”バラエティ番組の撮影”という”嘘”を
本気で信じ込んでしまっているから
”撮影で人が死ぬなんてありえない”と
思っているのだろうー
残り時間は5分を切っているー
”仕方ねぇー ”あいつ”と同じように憑依を暴露するかー”
亜優はそう考えると
「ーお前の彼女は今、俺に憑依されているんだー!
だから、自殺するなんて簡単なことなんだぜ!
どうせ、俺の身体じゃないんだしー」
と、叫ぶー。
”お~っと!自ら種明かしだ~!”
MCの梶川が会場を盛り上げようと叫ぶー
「ーーはは」
俊也は笑ったー
「ー憑依なんて、あるわけがないー
僕は、ボタンを押さないー
ボタンを押さなければ何事もなく30分が終わって
僕たちは100万円を手にできるー」
その言葉に、
亜優は瞳を震わせたー
「な、なんなんだお前ー……か、彼女が、お前の彼女が死ぬかもしれないんだぞ!」
亜優が叫ぶー。
しかしー、
俊也は即答したー
「ーよく分かんないけどー…
もし、亜優が自殺したいんなら、僕は止めないよ」
とー。
”憑依”をまるで信じていないー
”なんだよー…こいつ…なんなんだよ”
亜優は焦りの感情を覚えながら、
スタジオ内に設置されたタイマーのほうを確認する。
残り時間は既に2分を切っているー
「おいこら!テメェ舐めてんじゃねぇぞ!」
焦りと屈辱から、乱暴な口調で、俊也の方に近付いていく亜優ー。
亜優は俊也にナイフを向けて
「押せよ」と、怒りに満ちた表情で呟くー
もう、なりふり構わない、という様子だー。
しかし、それでも俊也はスイッチを押さないー
”亜優が自殺すること”もないし、
”亜優が僕を刺すこと”もないと、そう信じ切っていたー。
”30分彼女の豹変に耐えられれば100万円ー”
その金額から考えれば
事前にスタッフは、亜優に相当なことを要求して、
”恐ろしい豹変”を見せて来ることは、
安易に想像がついていたー。
「ーー僕は、必ず100万円を手に入れるよー」
俊也が笑うー。
ナイフを向けられても笑っているー。
”こいつー……
イカれてやがるー”
穏やかそうで、奥手そうな雰囲気の俊也だがー
”本性はイカれているー”
亜優に憑依した男はそう感じたー
”残り30秒~!チャレンジャーは100万円を入手してしまうのかぁ!?”
MCの梶川の声が聞こえるー。
「ーくっくそっ…!押しやがれ!!!!!」
ナイフを、俊也に向けて突き刺そうとする亜優ー。
しかしーー
そこに、バニーガール姿の咲奈が現れてー
「それはルール違反だろうが」と、亜優を突き飛ばしたー
そんな光景に戸惑う俊也ー。
亜優は起き上がると、残り10秒になっているのを確認して、
「こ、この女、殺すぞ!」と、俊也に向かって叫ぶー。
「ーー押せ!!押せって!!!
そのボタンを押せええええええええええええええええ!!!!」
鬼のような形相で、亜優は叫んだー
だがー、
俊也は、押さないー
残り5秒、4秒、3秒、2秒ー
「ーー切るぞ…!切るぞ!この女の首ーーー
切るぞ!!!!」
押さないー
それでも、俊也はボタンをーーーー
「うああああああああああああああああああああ!!!!」
怒り狂った形相でー、亜優は
屈辱と怒りと敗北の恐怖からー
後先考えずに、自分の首をナイフで切り裂いたー
血がスタジオに飛び散るー
目を逸らす咲奈ー。
「ーーーーー」
呆然とする俊也ー。
だがー
俊也はそれでもスイッチを押さなかったー
”お、お、お、お見事!チャレンジャーの勝利だぁ!”
MCの梶川は”初めての敗北”に動揺しながらもそう叫んだー
「ーーー」
俊也は倒れ込んだまま動かない亜優を見つめると
「ーーー自殺するほど、何か悩んでたのかな?」と、
首を傾げたー。
「ーーー……ーーーーー…」
そんな様子を腕組みしながら見つめていた
咲奈は、少しだけ驚いた様子で、
俊也のほうを見つめるー。
(こいつー…”大人しそうな雰囲気”の癖にー
何かがぶっ壊れてやがるー…)
咲奈は”もしも自分だったとしてもー”
亜優に憑依した男のように
”敗北”する運命が待っていたかもしれない、と
少しだけ背筋が凍るような思いをしたー。
「ーーーー」
MCの梶川のほうを見つめると、
咲奈は頷いてから
「ーそれでは、100万円のお支払をしますのでー」と、
俊也を別室に案内するー
「ーうん」
頷く俊也ー。
”会長”は、”ゲーム”の勝敗に厳しいー。
負けた以上、100万円は支払わなくてはいけないし、
仮に”亜優に憑依したあの男”が生きていたとしても
処分は免れることはできなかっただろうー。
「ーーーおめでとうございますー」
咲奈がそう言うと
俊也は100万円の入った封筒の中身を確認すると
「ありがとうございました」と、
穏やかな雰囲気で言葉を口にしたー。
そして、立ち去っていく俊也ー
「ーーー…あのー」
咲奈に憑依している男は、あくまでも普通の口調で、
俊也を呼び止めたー
「ー彼女さんー…
死んじゃいましたけどー…
どうしてそんなに平然とー?」
咲奈に憑依している男ですら、理解できなかったー
前に、この咲奈に憑依した時の彼氏は、
相当狼狽えていたし、
その反応が”普通”だー。
それなのに、この俊也はー
「ーーーう~ん…よくわからないけどー…
自殺しちゃったものは仕方がないしー
僕は別に亜優を追い詰めるようなことを
した覚えもないからー」
俊也はそれだけ言うと、
「あ、すみません。それじゃー」と、
頭を下げて立ち去っていくー。
一人残された咲奈は、しばらく呆然としていたが
やがて、笑みを浮かべたー。
”ただのバカ”なのかー
”サイコパス”なのかよく分からないー
だがー
ニヤッと笑う咲奈ー
「この世界には、まだまだイカれたやつもいるもんだぜー」
それだけ呟くと、咲奈は静かに笑みを浮かべながら
後片付けをするべく、スタジオの方へと戻って行ったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今回は勝利ルートを描いてみました!~☆
100万を手に入れても結局ハッピーエンド、
という感じではありませんが、
頭のネジが外れている感じの俊也くんに
とっては100万円をゲットできて
ハッピーなのかもしれません…☆
お読み下さりありがとうございました~!
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