<他者変身>変身キッズ②~調査~

教師の不正を暴くため、
子供嫌いの捜査官が、不登校の少女に変身して
潜入調査を開始したー。

その先に待つのはー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・

「あははは!ばい菌がうつるぞ~!」

生意気そうな男の子が、春菜の姿をした剛志に
そんな風に言い放つー。

「ーーーーーチッ」
不機嫌そうに舌打ちをしてしまう春菜姿の剛志ー。

不登校になった原因がいじめなのか、
それとも不登校になったからこんなことをしているのか
それはよく分からなかったが、
いずれにせよ、子供嫌いの剛志からしてみれば
不愉快この上なかったー

「あ~あ、くだらねぇくだらねぇ」

廊下に出てため息をつく春菜姿の剛志ー

「この姿じゃ煙草も吸えねぇしな」
イライラしながら、こっそりと非常階段のある場所に向かうと、
その階段のところで外の空気を吸いながらため息をついたー

「にしてもー…」
春菜の手を見つめながら、剛志は呟くー。

”この子ぐらい小さいと、やっぱ学校も大きく見えるんだなー”

剛志はー
潜入調査以外の捜査で、
何度か大人になってからも小学校に足を運んだことがあるー。

”大人になってから小学校を訪れると、
 学校はこんなにも小さかったのかー”と、
色々な意味で衝撃を受けるー。

がー、今、春菜の姿に変身したことで、
”小さい頃みたような”大きな学校の姿が再び目に
入ってきて、少し懐かしい思いをしたー。

非常階段から外を見つめながら「ふぅ…」とため息をついて
”そろそろガキがうるせぇ教室に戻らないとな”と、
振り返ったー

その時だったー

「いっ!?」
春菜らしからぬ反応をしてしまう剛志ー。

そこにー
ターゲットである女性教師・山西先生の姿があったからだー

「ーーー岡村さん~…!ここ、入っちゃだめなところだよ~~?」
怒ったような口調で山西先生が言うー

「ーわっ…す、すみませーー、い、いや、えー」
小学生が”すみません”なんて言うだろうかー、
そんな風に思いながら慌てて
「ご、ごめんなさい!」と言い放つと、
山西先生はにっこりと笑ったー

不登校だった”春菜”を心配するような言葉を口にする山西先生ー。

「ーーあ、ありがとう…ございますー」

低学年の子がこんな言葉遣いするか?と思いながらも、
そもそもあまり登校してなかったみたいだし、
事前の打ち合わせで聞いた性格も大人しく礼儀正しい、とのことだったため、
これで大丈夫かー…と、頭の中で考える剛志ー。

山西先生は、”薔薇の悪女”などと呼ばれているとは
思えないほどに優しくー
親身になって相談に乗ってくれたー

不登校にの理由は、本物の春菜が親にすら話さないようで、
その理由は不明だったが適当に作り話をして、
それを話すと、山西先生は「そっか~」と、言いながら
「悩み事があったら、先生がいつでも聞いてあげるから?ね?」と、
優しく微笑みかけて来たー

少しドキッとしてしまう春菜姿の剛志ー

”な、なんだよー
 ホントにこの先生、何か悪いことしてるのかよ”

そんな風に思いながら1日目を終えるー

”潜入調査”の依頼は釘宮班長によれば
教育委員会からの依頼で、
教育委員会に対しては、この学校の副校長が、
相談をしていたらしいー

山西先生の”悪事”は主に子供に対する暴言や虐待行為、
脅すような発言、それにお気に入りの男子生徒へのちょっかいなどー
多岐にわたっているー。

ただしー
山西先生は相当うまく立ち回っているのか、
その”証拠”が存在せずー、
それで、剛志が”嫌いな子供”に変身して潜入調査することになってしまったー

「ーーさようなら」
優しそうな校長先生とすれ違い、
春菜姿の剛志は”お疲れ様です”と言いたくなってしまったところを、
「さようなら~」と、子供っぽく振る舞うー。

学校から出ると、急に真顔になってー
”あ~やっとクソガキどもから解放された”と、
早歩きで捜査本部の方に向かうー。

周囲を警戒しながら路地に入っていくと、
待ち構えていた車に乗り込み、
そのまま、捜査本部に移動し始めるー。

「ははははー先輩、似合ってますよー赤いランドセル」
迎えの車を運転していた後輩の捜査官・鹿島がそう言うと、
思わず春菜姿の剛志は「うるせー!」と赤いランドセルを自分の横に
ぺしっと叩きつけたー

「ーははははは その姿でそんな叫ばれても迫力ないっすよ先輩ー」
笑みを浮かべる鹿島ー

「ーお、お前ー…元に戻ったら絶対に許さないからな~!」
冗談めいた口調でそう呟いた春菜姿の剛志は、
ふと、煙草を手にしてそれをいつものように吸おうとし始めるー

「ーちょ!先輩!ストップ!ダメっすよ!今吸っちゃー」
鹿島が運転しながらそう呟くー

「な、何でだよー…どうせ誰も見てないだろ?」
春菜姿の剛志が煙草を手にしたままそう呟くと
「ダメダメ、先輩は今、未成年なんすからー」
と、鹿島は続けるー

「いやいやいや、ガキに変身してるだけで
 身体自体は俺のだろ?
 別にこのガキの身体に憑依してるとかじゃなくて
 ただその姿に変身してるだけなんだし」

春菜姿の剛志がそう言うと、
「ーーいや、確かにまぁ、そりゃそうっすけどー
 とにかく、その姿で喫煙はダメっす」と、
譲る気配を見せなかったー

「ーーーったく何だよー…別にいいじゃねぇかー」
春菜姿の剛志が不機嫌そうにそう言いながらも煙草を
しまうと、
「ーまぁ、そのあれっすよー
 後部座席で口の悪いメスガキが煙草吸ってると
 俺が落ち着いて運転できないんでー」
と、鹿島が言い放つー

「んだよ お前の都合かよー
 ってか俺をメスガキと呼ぶなー」

春菜姿の剛志はうんざりした様子でそう呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本部に戻ると、
釘宮班長に状況を報告するー。

「ー流石に今日1日では無理だっただろう?」
釘宮班長がそう呟くと、
「えぇ、まぁー」と、春菜姿の剛志は呟いたー

「まぁー…注意深く、山西先生の周囲も含めて監察するんだー
 必ず、ボロを出すー。
 その決定的な現場を押さえるんだ」

釘宮班長の言葉に、春菜姿の剛志は「仕事はしっかりこなしますよー」と、
自信満々に応じたー。

だがー…

本部内には、自宅に帰ることができない時などに備えー、
捜査官用の自室が一人一つ用意されているー。

自宅ほど広くはないが、
それでも十分にくつろぐことはできるー。

「ーー…山西先生ー、今日は全くボロを出す気配はなかったなー」
そう呟く春菜姿の剛志ー。

その時だったー

♪~~~

”先輩~~!絵本読んであげましょうか?”

後輩の鹿島が本部内にある剛志の個室のインターホンを鳴らして
そう言ってきたー

「ーうるせ~!何なんだお前は!」
揶揄いに来た鹿島にそう言い放つと、
”やつは、捜査能力だけは随一なんだけどなー”と、
苦笑いしながらため息をついたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーー芝原(しばはら)くんー
 休み時間にちょっと職員室に来てくれる?」

山西先生がそう呟くー。
周囲に悟られないようにしているのか、
さりげなく、その芝原という児童に声を掛けた
山西先生ー

「ーーーーー…」
だが、潜入調査として周囲の状況に常に気を配っている
春菜姿の剛志は”それ”を見逃さなかったー

”何かするつもりかー…?”
春菜姿の剛志は、そう思いながらー
山西先生の悪事を突き止めるためー、
芝原という子が呼び出された休み時間ー
その子を尾行してー、
応接室の中から聞こえてくる会話に耳を澄ませたー。

芝原という子は終始怯えていたー。

やっぱり山西先生が何かー

”ぱちっ!”

応接室の中からー
ビンタするようなー
そんな音が聞こえて来たー

「ーー!!!!」
身を潜める春菜姿の剛志ー

しかしー
そこにー

「ーどうしたんだい?」

「ー!?」

背後から校長先生の声が聞こえー
振り返ると、そこには髪の薄い優しいおじさんー、という雰囲気の
校長先生の姿があったー

「あ、いえ…そのー」

応接室の前で会話を盗み聞きしている児童ー…なんて
確かに怪しく見えるだろうー。

「ーははは、その部屋が気になるのかい?
 確かに、みんなは普段、入れないから、気になるのも仕方ないかなぁ」

気さくな雰囲気の校長先生は、
春菜姿の剛志を疑うようなことはなく、
そう笑いながら言い放つー

「ーー中、見るかい?」

山西先生が中にいることを知らないのか、校長先生はそう言い放つー

「ーーあ…え、えと…だ、大丈夫ですー」
慌てて頭を下げて立ち去る春菜姿の剛志ー。

”くそっー…せっかく子供への暴力の現場を
 押さえることができると思ったのにー”

心の中でそう呟きながらも、同時に
春菜姿の剛志は”この様子ならーすぐにボロを出しそうな気もするけどなー”と、
頭の中でいろいろな計算を巡らせたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーー」
教室にいるだけで鳥肌が立ちそうになるー

春菜姿の剛志はそう思いながら、
教室内の様子を見つめるー。

”くそっー…やっぱりガキは苦手だ…”

そんなことを思いながらー、
”さんすう”の授業を受けるー。

”さすがに、今の俺が算数の授業を受けても
 得るものもないしなー”

高校や大学ぐらいの授業ならまだしも、
流石に小学校低学年の算数の授業は、
少なくとも剛志にとっては簡単すぎて、
何も得るものはないー

そんなことを考えているうちに授業は終わり、
給食の時間になるー

”昔は多いって感じたけどー
 今、見ると少ないよなー”

そんな風に思いながら、話しかけて来るクラスメイトと
会話を交わしながらため息をつくー

「わ~すごい~!」
「へ~~!」
「ーやった~!」

子供っぽい答えを適当に返しながら
給食の時間が終わるまで”耐える”ー

そうこうしながらも、教室で給食を食べている
山西先生のほうを確認することも忘れないー

さっきの休み時間以外ー
今のところは”優しい女性教師”という印象しかないー。

しかし、教育委員会を通じて、
剛志の所属する特殊捜査班に依頼が回って来るぐらいだからー
相当手ごわい相手であることには違いないー。

「ーーうわ~~!ばい菌!」
男子が再びそう叫ぶー

「ーばい菌じゃないし!」
思わず少しカッとなって反論すると、
同じ班の子供が「気にしなくていいよー」と、フォローを入れるー。

どうやら”春菜”は全員にいじめられている感じではなく、
あのばい菌男子と、他数名だけが揶揄ってきているような状態のようだー

「ーーう、うん」

”こいつら全員、俺の本当の姿を見たら驚くだろうなー”

そんなことを思いつつも、潜入調査である以上”女の子”を演じなくてはいけないし、
山西先生に不審に思われるわけにはいかないー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日も、学校の近くに後輩の鹿島が運転する車が迎えに来て、
春菜姿の剛志はそれに乗り込んだー

「あれ?今日も鹿島かー」
春菜姿の剛志がそう言うと、
後輩の鹿島は「俺じゃ不満っすか~?」と、笑いながら言うー

「いや別にー。鹿島、いつも”2日連続お迎えとか勘弁っす!”とか
 言ってなかったか?」

春菜姿の剛志がそう言うと
「へへへ~可愛い女の子を迎えに行くのならいくらでも~!」
と、鹿島が笑ったー

「ーーチッ、元に戻ったらお仕置きしてやるからな」
春菜姿の剛志がそう言うと、
「あぁ~その姿でそういう言葉遣い…たまらないっす」と
鹿島は嬉しそうに呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

”あ~早く元に姿に戻りてぇ”

ランドセルを背負いながら今日も学校にやってきた
春菜姿の剛志ー

「おはようございますー」
校長先生と正門前であいさつのやり取りをして、
教室に向かっているとー
その途中に担任の山西先生とすれ違ったー

「あ!」
すれ違いざまに山西先生がそう呟くと
周囲をキョロキョロしながら春菜姿の剛志に近付いてきて
静かに囁いたー

「ー2時間目終わった後の休み時間ー
 わたしのところに来れる?
 職員室の隣にある部屋に来てくれればいいからー」

「ーーー!!!」

春菜姿の剛志は昨日のことを思い出すー。

昨日ー
山西先生に男子が一人、呼び出されていたー。
校長先生が偶然通りがかったせいで、ハッキリと何を
話していたのかは確認できなかったがー
”叩くような音”も部屋の中から聞こえていたー

”まさか、この先生、次は俺をターゲットにー?”

この山西先生が児童に”どんな悪いこと”をしているのかは
未だに分かっていないー。

だがー、もしも何も知らずに
”春菜姿の剛志”に何かをすればー

その現場を押さえれば、終わりだー。

”もうこれ以上、ガキでいるのもうんざりだからなー”

剛志は、”今日でアンタの悪事を暴かせてもらうぞ”と
思いながら、山西先生からの呼び出しに応じるのだったー。

③へ続く

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次回が最終回デス~!
潜入捜査の先に待つ結末をぜひ見届けて下さいネ~!

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