<憑依>にんげんのこころ②~人は邪悪~

憑依することで、相手の本心が見えるー。

そんなことに気付いてしまった
”生まれつき憑依能力を持つ男”

彼の人間不信は、拡大していくー。

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「ーーお兄ちゃんが元気そうでよかった~!」

現在高校生の妹・佳奈美が周平の家にやってくるー

周平は、そんな言葉を聞きながらも
”これも本心じゃないんだろうなー…”と、
少し悲しそうな表情をするー。

「ーお兄ちゃん、わたしがもっと小さい頃は
 よく遊んでくれたのにね~」

佳奈美が雑談をしながらそんなことを口にするー。

「ーー佳奈美が、嫌がってるかと思ってー」
周平は、つい、そんな言葉を口にしてしまうー。

”お兄ちゃん、早く死んでくれないかなぁ~”
”あ~うざ 可愛い妹演じてやってるのに気づけよ”
”明日、お兄ちゃんが心臓発作で死にますように”

それが、佳奈美の本心だー。

憑依することで、相手の本心が分かることは、確かに便利だー。
けれどー、こんなことになるとは思ってもいなかったー。

憑依して相手の気持ちを知れば知るほど
人間という生き物は信用できない生き物だという気持ちが
強まっていくし、どんどんどんどん人が信用できなくなるー。

「ーわたしが~? 
 そんなこと全然ないのに~!」

佳奈美が笑いながら言うー。

今日も、佳奈美は”自分から”
「そういえば今度の週末、お兄ちゃんの家に遊びに行っていい?」と
連絡をしてきたことにより、
こうして今日、周平の家にやってきているー。

”ーー…また、何か企んでるんだろ…?”
周平はそんなことを思いながら、
佳奈美のほうを見つめるー

「あ~ここ、ちゃんと掃除しなくちゃだめだよ~!」
佳奈美が、掃除が疎かになっている場所を見つけて
そう呟くと「せっかくだし、掃除してあげる~」と、
笑いながら、兄・周平の部屋を掃除し始めるー。

”表面上の行動”と”人の本心”は違うー。

小さい頃の思い出から、近況報告まで
色々な話をしながら、部屋の掃除をしてくれる佳奈美ー。

とても楽しそうにー
とても懐かしそうにー
佳奈美は言葉を続けているー。

妹の佳奈美は
昔から”表面上”は、とても優しくー、とても良い子だー。

だが、裏ではー…

「うっ…」
周平は佳奈美に憑依して、佳奈美の意識を支配したー。

両手を確認してー
「最後に憑依したときより、随分大人っぽくなったなー」と、
佳奈美の声で呟くと、
佳奈美の本心を読み取ろうとするー。

いつものように、イメージが浮かび上がってくるー

”こいつの部屋、汚すぎだろ!早く孤独死しろよ”
”わたしが気を利かせて思い出話してやってるんだから、楽しそうに笑えよ!”
”あぁキモイ あぁキモイ”
”でも、将来のためにいい妹を演じて置いて、損はないからね ふふ”

そんな言葉が聞こえて来たー

周平はすぐに佳奈美から抜け出すと、
深くため息をつくー

「あっ…?」
憑依されていた佳奈美が一瞬周囲をキョロキョロするも、
そのまますぐに何事もなかったかのように掃除を始めるー

「ーお兄ちゃんも、もう少し楽しそうに笑ってよ~」
佳奈美が笑いながら言うー。

”わたしが気を利かせて思い出話してやってるんだから、楽しそうに笑えよ!”

やっぱり、それが本心なのだろうー。
そう、思いながら、周平は改めて妹の佳奈美が怖くなり、
佳奈美と適当に雑談しながら
”俺のことが嫌いなら、俺のところに来ないでくれよ”と、
心の中で強く願ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーおはよ~!」
大学では、仲の良い女子生徒の美鈴から声を掛けられて
周平は穏やかな表情で振り返ったー

美鈴と楽しく雑談をする周平ー。
こんな時間が永遠に続けばいいー。
そんな風に思ってしまうー。

日に日に、美鈴に対する好意が膨れ上がっていくー。
そして、美鈴も周平を見かけるととても楽しそうに話しかけて来てくれてー
前よりも周平との距離はかなり縮まったー
そんな、気がするー

けれど、周平はやはり、”本心”が気になってしまって
仕方がなかったー。

妹の佳奈美のように”表”では全くそうは見えないのに
心の中でどす黒いことを考えている人間はいるー。

佳奈美だけじゃない。
佳奈美以外でも、そういう人間は今までに何人も見て来た。

この美鈴も、きっとー…

「ーーねぇねぇ、今度の土曜日ー…予定とかある?」
美鈴が、初めてそんな言葉を口にしたー

「えっ!?」
予想外の言葉にドキッとしながら周平が美鈴のほうを見つめると、
美鈴が「あ、急に驚かせてごめんねー」と、言いながら
共通の趣味に関係するイベントの公式サイトをスマホで
表示させながら
「よければ一緒に行きたいなぁ…ってー だめかな…?」と、
美鈴が言葉を続けたー

「ーえっ!?えっ!?いや、全然ー!」
周平が慌ててそう呟くと、
「ー全然?」と、美鈴が笑いながら言うー。

一緒に行くことにOKしているのか、OKしていないのか
曖昧な返事をしてしまった周平は
慌てて「いや、その、行く!行くよ!」と嬉しそうに返事をしたー

だが、それと同時にー
周平は”本心を覗かずにはいられない不安”に
駆られてしまいー

その日の夜ー
”憑依”するために、以前、サークル活動中に聞いた住所に
霊体の状態で向かったー。

実家で暮らしている美鈴は、自分の部屋で
何やらモノの整理整頓をしている最中のようだったー。

佳奈美の時もそうだったが、
”短時間の憑依”では、脳が記憶を補正するのか、
”意識が飛んでいた時間”を心配するような素振りを見せた人間は
今までにいないー。

流石に長時間憑依しているとそうではないものの、
”憑依して”
”相手の本心を覗き”
”憑依から抜け出す”
ぐらいでは、特に違和感を抱かれるようなことはないー。

「ーーー」
美鈴の身体を支配して、ドキッとしたものの、
好きだからこそ傷つけたくないー、と思いながらー
美鈴の”本心”を読み取ろうとするー。

”自分からデートのようなもの”に誘ってきたからー
恋愛感情はなかったとしても、
少なくとも”嫌われている可能性は低い”と、心の中で
周平は祈るー。

だが、妹・佳奈美のように心の中で
どす黒いことを考えている可能性もー0ではーーー

”良い金づる見つけたぁ”
”こっちがニコニコしてれば簡単になびくし、ちょろいもんだよね”
”お金、どのぐらい出してもらおうかなぁ~”
”あ、甘えて見たら色々買ってもらえるかも!アイツ馬鹿だし”

美鈴の、そんな声が聞こえて来たー。

「ーーーーー」
呆然とした表情を浮かべる美鈴に憑依した周平ー
美鈴の身体のまま、その場で膝を折ってー、
一人、目に涙を浮かべるー。

いつも、憑依して、相手の本心を読み取ったら
すぐに憑依から抜け出すことも多い周平ー。

しかしー
今回ばかりはー、
今回だけは、流石にキツかったー。

「ーーーなんだー…やっぱ、やっぱそうだよなー」
美鈴の身体でそう呟くと、
一人、その場で笑いだしてしまうー

「ー俺は金づるかー」
鏡に映る美鈴を見つめながら、
「そうかそうか」と、怒りの形相を浮かべる美鈴ー。

「ーこんなに可愛い顔してー、そんな悪いこと
 考えてたんだなー」

好意が、一気に憎しみへと変わったー。

「ーーいいさいいさーそっちがその気ならー」
美鈴の身体でそう呟くと、
「ーこっちにだって考えがあるー」
と、そう言い放ちー、
そのまま服の上から胸を揉み始めたー

「ー俺を騙した罰だ…!ゆるせない…!
 滅茶苦茶にしてやる!」

怒りの表情を浮かべながら美鈴は自分の胸を夢中に
なって両手で揉み始めると、
しばらくの間、狂ったような笑みを浮かべたー

やがて、胸から手を離すと、
「ーお前が悪いんだ…!お前が!」と、言いながら
鏡に向かってキスをし始めるー。

”憑依”でこんなことをするのは
許されることではないー。

周平は、そう思っているー。

けれどー
金づる扱いされて、こんな風にコケにされていると知ってしまっては
もう我慢ならなかったー。

鏡に唇を押し付けながら夢中になってキスをする美鈴ー

「俺は金づるか!」
「俺はお前のおもちゃか!」
「俺は、俺はお前のこと、好きだったのに!」
「ふざけやがって!ふざけやがって!」

美鈴の声で叫びながら
鏡が唾液塗れになってもお構いなしで、
鏡を舌で舐め始める美鈴ー

「ーーひひひひひひっ!お前なんて滅茶苦茶にしてやる!
 ひひひひひひひひひっ!」

興奮しながら鏡を舐めまくる美鈴ー。

興奮で感情はさらに高ぶっていき、
憎しみもさらに膨れ上がっていくー。

「ー人間なんて…どいつもこいつも!
 どうせこいつも俺のことキモイと思ってたんだ!」

美鈴が怒り狂った様子でそう叫ぶー。

美鈴に憑依している周平は
美鈴の本心をさらに読み取ろうとするー

”急にサークル辞めて意味分からないし、気持ち悪い!”
”キモイのに相手してやってるんだから感謝してほしい”
”話しかけられるたびにヘラヘラしちゃって馬鹿みたい”

邪悪な本性が次々と浮かび上がってくるー

「ーあぁ、そうかよ!そうかよ!」
怒りが爆発した周平ー。

美鈴の服を怒りに任せて引きちぎり始めるー。
美鈴の服が音を立ててボロボロになっていうのもお構いなしで、
半裸状態になって、もはや自分でも何をしているのか分からないぐらいに
身体を滅茶苦茶に弄んでいくー

「ーーははははははは!俺はお前になんだってさせられるんだぞ!
 ほら!キモイやつに好き放題されている気分はどうだ!
 ははっ!はははははは!」

服を破り捨てた美鈴ー。
怒りに任せて髪をボサボサになるまで掻きむしると、
狂ったように胸を揉み始めるー。

だがーそこにーー

「ーーね、姉さんー!?」

美鈴の怒り狂った声を聞いたのかー
それとも、美鈴の暴れまわる音を聞いたのかー
美鈴の弟が驚いた様子で部屋の扉を開いたー。

そういえば、弟がいると聞いたことがあるー

「ーーーへへへへ」
美鈴はニヤニヤしながら弟のほうを見つめたー。

そこにいたのはー
弟が知る姉の姿ではなくー
服をボロボロに引きちぎり、髪をボサボサにして、
胸をニヤニヤしながら揉んでいる”知らない姉”の姿だったー

「ね、姉さんー?」
そんな弟を見て、「お姉ちゃん、本当に悪い女なの~!!」と、
嬉しそうに叫ぶと、そのまま弟を無理やり部屋に引きずり込んで、
キスをしたり、強引に服を脱がせて、弟のアレをしゃぶらせたりしたー

”絆も何もかも、ぶっ壊してやる”

そんな風に思いながらー
美鈴の身体で、好き放題の限りを尽くしー、
ようやく周平は満足したのか、そのまま美鈴の身体から抜け出したー。

慌てて部屋から逃げていく弟ー
倒れ込んで、口から泡を吹いている美鈴ー。

「ーー長時間酷使しすぎたかー
 ま、もうお前なんかどうでもいいや
 裏切者!」

周平は怒りを込めてそう叫ぶと、
ピクピクして気絶している美鈴を見つめながら
「いい気味だぜ」と、嬉しそうに呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー

あれから、大学で美鈴の姿を見かけなくなったー

連絡は取っていないし、
どうなったのかも分からないー。

けど、そんなことはどうでもよかったー

”憑依”しなければ美鈴の本心を知ることもなかっただろうー。
”憑依”しなければもしかしたら”表面上”は美鈴と付き合うことも
できたかもしれないー。

だがー、それでは
あんな邪悪なことを考えているとは知らないままー
金づるとして利用されていただけだろうし、
この結果に後悔はしていないー

「はぁ…」

ますます人間不信を強めた周平は
今日も大学で一人、授業を受けながら
重々しいため息をついたー

③へ続く

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コメント

最終回…みたいな終わり方にも見えるかもですが、
まだ明日も続きます~!☆

これ以上、何が起こるのかは明日のお楽しみ…デス!

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