いじめられているクラスメイトを気遣う少女ー。
しかし、いじめを受け続けたことで歪んだ彼の心は、
そんな少女を拒みー
”お前に僕の気持ちを分からせてやるー”という
憎しみばかりを膨らませていたー。
そして…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ち、違うよ…!わたし、小野田くんのことー!」
泰明になった萌奈がそう叫ぶと、
萌奈になった泰明はうんざりした様子で呟いたー
「もう遅いよー。
僕になった時の倉本さんの反応が答えだー
やっぱりそうだー
お前は僕のことを見下して
僕みたいな”ゴミ”を助けることで
”いじめられている子を助けているわたし、可愛い”ってー
優越感に浸ってたんだー!」
萌奈(泰明)が大声で叫ぶー
「違うよ!!!絶対にそんなこと思ってない!」
泰明(萌奈)が必死に反論するー。
「じゃあ、今の反応は何だって言うんだよー」
萌奈(泰明)が言うー
「ーーーえ…ち、ちょっと待ってー
そんなー」
入れ替わった直後ー、泰明(萌奈)は確かにそう言ったー
「ーー”そんな”ー?
僕みたいなゴミの身体になって、ショックだったんだろう?
隠しても、僕には分かるんだよ!
この偽善者!」
萌奈(泰明)にそう言い放たれた泰明(萌奈)は
目に涙を浮かべながら「ち、違うー!」と、
なおも否定の言葉を口にしたー
「ーそんな、って言ったのは、小野田くんの身体になったからじゃないよ!
こんな風に、他の人と身体が入れ替わったら、誰だって驚くよ!」
泰明(萌奈)がそう反論するも、
萌奈(泰明)は「だったらー…僕の身体で暮らしてみろ」と、言い放つー。
「ーーえ…そ、そんなの無理だってばー」
泰明(萌奈)は困惑した様子でそう呟くと、
萌奈(泰明)は「ほら~~~~!それがお前の本当の気持ちだ!」と、
勝ち誇ったような表情で言い放ったー
「僕みたいなゴミになりたくない!
僕みたいないじめられっ子になりたくない!
それがお前の本性だ!
何が”小野田君を助けたいの!”だ!
ふざけるな!
僕のことなんか、何も分かってないくせに!!!」
萌奈(泰明)は、目に涙を浮かべながらそう叫んだー
目の前で自分が怒ってー、
自分が涙を流している光景に困惑しながら、
泰明(萌奈)は「違うの!落ち着いて聞いて!」と言い返すー。
「小野田くんと入れ替わるのが嫌なわけじゃないのー
でも、相手が誰でも、入れ替わったままじゃ、
わたしは自分の家に帰れないし、
みんなからも色々誤解されちゃうし、
学校の勉強とか、成績にも問題が出ちゃうかもしれないー。
小野田くんにだって分かるでしょ?
誰が相手だって、入れ替わったまま過ごせ!なんて言われたら不安だよ!」
泰明(萌奈)がそう言うと、
萌奈(泰明)は「どうせイケメンなら、ニコニコして喜ぶんだろ?」と、
捻くれた言葉を呟くー。
「ーーそんなことないってば!」
泰明(萌奈)はそう言うと、
「今すぐ元に戻してー…!お願い…!」と、
必死に頼み込むようにして、萌奈(泰明)のほうを見つめるー
だが、萌奈(泰明)は身体を元に戻すつもりはないのか、
返事はしないー。
そんな萌奈(泰明)に対して、泰明(萌奈)は言い放つー。
「ー小野田くんはわたしになってどうするつもりなのー?」
とー
「ーーーーー」
萌奈(泰明)は答えないー。
「ーー小野田くんから見れば、わたしの人生は輝いてるのかもしれないー。
確かに、小野田くんは本当に大変だと思うし、可愛そうだと思うし、
だからこそ、何とかしてあげたいって思ってるのー
でもー…わたしだって色々大変なことはあるし、
急にわたしになったって、普段のわたしのように小野田くんが
振る舞うのは無理だと思うー。
わたしだって、急に小野田くんとして振る舞うのは無理だしー
もしも”わたしになって、小野田くんの言う”安全地帯”に行こうと
しているならー」
そこまで泰明(萌奈)が言うと、
萌奈(泰明)は笑ったー
「ーー倉本さんは、僕が倉本さんになりたくて
身体を入れ替えたと思ってるのー?」
とー。
「ーーえ」
泰明(萌奈)が困惑しながら萌奈(泰明)のほうを見ると、
萌奈(泰明)は「僕のこと、そんな風に見てるんだな」と、呟くー
何もかもが、今の泰明にはネガティブな言葉として届いてしまうー。
そしてー
憎しみをぶつけるかのように、萌奈(泰明)は
顔を上げて言葉を続けたー。
「ーーーお前も”不登校”にしてやるんだー」
とー。
萌奈(泰明)が邪悪な笑みを浮かべるー
「ーえ……」
泰明(萌奈)が困惑するー
「ー僕がお前になったのはー
お前のことも同じようにしてやるためだよー
僕のことをいつもキラキラしたところから見下してー
ふざけるな!!!
僕と同じ目に遭わせてやるー!
お前のキラキラを全部奪い取ってやるー!
お前を不登校にして全部全部奪い取ってやる!」
萌奈(泰明)の言葉に、
泰明(萌奈)は恐怖を感じながら震えだすー
「ーわ、わたしの身体でー…
わたしを不登校にするってことー…?」
泰明(萌奈)がそう言うと、
萌奈(泰明)は笑みを浮かべたー
「ーお前に僕の苦しみを味合わせてー
僕を見下していたお前から、お前のキラキラを奪い取ってやるー」
萌奈(泰明)はそれだけ言うと、
そのまま立ち去って行こうとするー
「ーーーー…そんなことー…」
泰明(萌奈)が言葉を発するー。
「ーーそんなこと、間違ってるよ!」
泰明(萌奈)の言葉に、立ち止まった萌奈(泰明)は
「ーうるさい!僕を見下すな!」と叫び返すと、
そのまま立ち去っていくー
「ーーわたし、小野田くんのこと、本当に助けたいと思ってるから!!!」
泰明(萌奈)がなおもそう叫ぶとー
「なら、助けてみろよ」と、萌奈(泰明)は冷たく言い放って
そのまま立ち去って行ってしまったー
泰明が”こう”なってしまったのは
いじめが原因だー。
いじめは人を歪めるー
泰明(萌奈)は、
”自分の人生が滅茶苦茶にされてしまいそうな状況”に
強い不安を感じ、
しばらくその場で一人、泣いていたものの、やがて、立ち上がって
”なんとかしなくちゃ”と、言葉を呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーも、萌奈ー…学校はー?」
翌朝ー。
萌奈(泰明)が学校に行こうとしないのに気づき、
母親が困惑した様子で声を掛けるー
いつもとは違い、顔に生気がなく、
髪もボサボサのままの萌奈(泰明)を見て
母親が驚いていると
「行かないー」と、萌奈(泰明)は呟いたー。
「え…」
戸惑う母親ー
そんな母親に対して、萌奈(泰明)は言葉を続けたー
「わたし、不登校になるから」
とー
それだけ呟くと、
いつも優しく微笑んでいるような感じの萌奈とは真逆の、
不愛想な態度で「用が済んだら出てって」と、
母親を部屋から追い出したー。
”不登校”などという言葉とは
無縁だったはずの突然の娘の豹変に困惑したような
表情を浮かべる母親ー
一人、自分の部屋に残された萌奈(泰明)は
にやりと笑みを浮かべながら、静かに呟いたー
「キラキラした安全地帯にいたお前を、堕落させてやるー」
ボサボサの髪のまま、鏡を見つめると、
萌奈(泰明)は悪意に満ちた笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方ー、
泰明(萌奈)は学校に到着するとため息をついたー。
”今のわたし”は、小野田泰明ー。
このまま教室に行けばー
”お前の根性を叩き直してやる”と、楽しそうにしている
自称”笠本教官から嫌がらせを受けることは目に見えているー
けれどー
「ーーーー」
意を決して、教室に向かう泰明(萌奈)ー
昨夜ー
泰明の身体で一晩過ごして分かったことがあるー。
”泰明の家は母子家庭”でー、
”母親は、泰明に興味がない”ー
ということをー。
昨日も”一切”声を掛けられることもなく、
こちらから声を掛けても”話しかけないで”オーラがすごかったー。
虐待してくるわけではないが、
何もしてこないー。
何もしてもらえないー
そんな、状態だったー。
そして、案の定ー
”笠本教官”のいじめが始まるー
教官を名乗るいじめの主犯・笠本と、その友人ー、
そして生徒会副会長の大人しい女子生徒・美彩ー
その三人に、教室に呼び出されたのだー
主にー”手を出してくる”のは
笠本とその友人の二人ー。
美彩は背後に控えているだけで、
特に直接的な暴力や、暴言を浴びせるようなことはしてこないー。
「ーーー」
その”いじめ”は、泰明(萌奈)の想像を絶する内容だったー。
もちろん、泰明を助けようとしていた萌奈は、ある程度
いじめの内容を知っているー
しかしー
”外から見ている”のと
”当事者としていじめられる”のでは、
同じ内容でも、感じ方が全然違うー
そのことを、歯を食いしばりながら実感した泰明(萌奈)ー
”お前に僕の気持ちは分からない”
そう言われたことを思い出しながらも、
泰明(萌奈)はそれに耐えたー。
「ーーーーへへへへへ
何だよ 今日はいつもより、大人しいなぁ?」
笠本”教官”がそう笑うとー
「言っとくけど、俺は”いじめ”てるわけじゃねぇー
お前の”指導”をしてやってるんだー。
副会長が”証人”さー」
と、言葉を続けるー。
生徒会副会長の美彩は、萌奈ほどではないものの
成績優秀で、クラスメイトからもある程度信頼されているー
”いじめ”を表立ってするのは笠本と友人だけでー
美彩は”今のような”見えない場所でだけー
いじめに加担しているー。
「俺だってーこんなことはしたくねぇんだー
でもーお前の根暗な性格、
鍛えてやろうと思ってー
”教官”やってやってるんだー
感謝しろよー?
な?」
そんな笠本”教官”の言葉に、その友人は笑うー。
少し離れた場所にいる美彩は、
泰明(萌奈)のことを少し遠くから
悲しそうな目で見つめているー
「ーーーーー」
泰明(萌奈)はそんな美彩のことを見つめ返しながら、
”美彩ちゃんもー無理やり加担させられているのー?”と、
そんな風に思ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”いじめ”は続くー。
想像以上に、激しいいじめー。
「ーーーこんなんじゃ……つらいよねー…」
立ち向かおうとするもー
やっぱり、苦しいー。
泰明(萌奈)は、
自分が”萌奈”であった時と同じように、
必死に反論したり、
叱るようなことを言ったりするー
けれどー
”萌奈”が同じことを言ってもー
それは”萌奈”の言葉だから聞き入れられていたことー。
”泰明”の言葉ではー
”泰明の癖に生意気”と、いう反応しか返ってこないー
”同じことをしているのに”
人によって反応が違うー。
この世はー、そういうものだー。
萌奈が萌奈として”いじめは良くない”と言えば、
笠本たちは一時的にでも引き下がるー。
けれど、萌奈が泰明として”いじめは良くない”と言えば
笠本たちは逆上するー。
それでもー…
何とか、泰明(萌奈)はいじめの出口を見つけ出そうとー
行動に出るー
”いじめ”を解決させればー
小野田くんも考えを変えてくれるかもしれないー
”小野田くんはゴミなんかじゃない”と示すことができてー
身体も、元に戻してくれるかもしれないー。
「ーーーーー…」
下校中の泰明(萌奈)の姿を、
ボサボサの髪のまま外出していた萌奈(泰明)は、
遠目で見つめながら表情を歪めるー
”ーーどんなに頑張ったって、僕みたいなゴミはゴミのままなんだー”
萌奈(泰明)は小声でそう呟くー。
学校での辛い日々は続くー。
”萌奈が不登校になった”ということも話題になりー
”早く何とかしなくちゃ”との気持ちも強まる中ー
先生にもいじめの件を相談するー。
しかし、先生は”泰明の言葉”だからなのかー
動くことに消極的ー
先生もアテにならないー
そう思った泰明(萌奈)は、
”解決の糸口”として、いじめグループの一人ー、
生徒会副会長の美彩と1対1で話をするタイミングを見つけたー。
「ーーどうしてわた…、、僕をいじめるのー?」
泰明(萌奈)が美彩に対してそう言い放つー
「ーーー…ーーもし、笠本くんたちに無理やり加担させられてるならー」
生徒会室で、二人しかいないタイミングで
問い詰められた美彩は、少しだけ驚いた表情を浮かべたあとにー
静かに笑みを浮かべたー。
「ーーふふふふ…
わたしー…
小野田くんのことが好きなのー」
クスクスと美彩は小さい声で囁いたー
「ーーえ!?」
泰明(萌奈)は美彩の予想外の返事に困惑するー
そして、美彩は言い放ったー
「ーわたしー
好きな人がいじめられてるのを見ると
興奮するのー
だからー
笠本くんたちと一緒になって、小野田くんをいじめてるのー」
美彩の言葉に、
泰明(萌奈)は呆然としたー
”いじめ”の理由はー
とんでもなく、くだらない理由だったー
笠本”教官”は、弱気な泰明を見ているとイライラするから
根性を叩き直すためー
その友人は”友達の笠本”がいじめをしているから何となくー
そして、美彩はそんな二人を見て
”好きな小野田くんがいじめられている”のを見て興奮するからー
救いようのない、理由だったー
「ーーそんな…そんな理由で!」
泰明(萌奈)は思わず美彩にビンタを食らわせるー
しかしー
女子同士のやり取りではなくー
今は、男子の身体ー
「ーーーあ~~~~女の子を殴ったぁ~♡」
美彩は不気味な笑みを浮かべるとー
泰明(萌奈)はハッとしてー
「ち、ちがー」と、言いかけるも、
美彩は「も~~~~っと、いじめちゃおっかなぁぁぁぁ…」と、
まるで幽霊のように不気味な声で囁いたー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
入れ替わった二人が幸せになる結末は
あるのでしょうか~?
次回が最終回デス~!
今日もありがとうございました~!☆
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