そこは、開発中の入れ替わり薬の
”様々な実験”が行われる施設ー。
入れ替わり薬の実用化に向けて、
今日も”入れ替わったまま長時間過ごすとどうなるのか”や、
”入れ替わったまま片方が命を落とすとどうなるのか”など、
数多くの実験が行われていたー。
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「ー今日で、”150日目”ですねー」
研究所で働く女性研究員・松浦 和美(まつうら かずみ)が、
そう言葉を口にすると、
その話し相手ー、20代の若い女性ー、村川 加奈(むらかわ かな)が、
「もうそんなになるんですかー」と、そう言葉を口にしたー。
ここはー
現在、開発中の”入れ替わり薬”の実用化に向けた
あらゆるテストを行っている研究施設ー。
”開発部”と”試験部”に分かれていて、
ここはその”試験部”にあたる区画だー。
試験部では、開発部が開発中の入れ替わり薬の
あらゆるテストを行っていて、
”治験”と称して、入れ替わり薬のテストを行う人間を募集ー、
多数のテストを施設内にて行っているー。
今、研究員の和美と話をしている
20代の女性、村川 加奈もそんな”治験”に応募した女性の一人だー。
「まぁ、でも、150日も経過すると
流石に”男だった頃”の方が不思議な感じになりますよー」
治験に参加している”加奈”はそんな言葉を口にしたー。
「ー今は、自分が”女”って言う方がしっくりくる感じですか?」
研究員の和美がそう言葉を口にすると、
加奈は「そうですねー…それは最初は、ずっとドキドキしっぱなしで
何も手につかないぐらいでしたけどー、
今はもう、そういう感じはないのでー」
と、少しだけ照れ臭そうに笑ったー。
そうー、加奈は
”入れ替わり薬を使い、長期入れ替わった状態での影響”をテストするための
被験者だったー。
加奈と同じく入れ替わり薬の治験に応募した男子大学生、
大塚 泰樹(おおつか やすき)と入れ替わっていて、
現在、入れ替わり150日目だー。
もちろん、二人は”入れ替わり薬”の治験であること、
1年間、この研究所で長期的な観察が必要になるために、
住み込みのような状態になることなどを
事前に説明されて、理解した上で治験に応募しているー。
二人には同世代の人間の平均年収を遥かに上回る報酬が
既に支払われていて、
ちゃんと、”お互いに納得した上で”治験を受けていたー。
「ーー元に戻った時、スムーズに男としての自分に
戻れるかどうかが、逆に心配になるぐらいですよ」
加奈(泰樹)が少し苦笑いしながらそう言葉を口にすると、
研究員の和美も笑いながら、会話を続けるー。
「それにしても、すみませんー
毎日検査とか、話をするだけで
あんなにお金も貰ってしまってー
それにー…この施設の生活も充実しますしー
何だか逆に申し訳ない気持ちでー」
加奈(泰樹)はそう言葉を口にすると、
和美は「そんなこと気にしなくていいんですよ~!
未知の薬の実験に参加してるわけですし、
リスクを取ってるんですから、それだけでも十分に
見返りを得る資格はあるんですから」
と、そう言葉を返すー。
”入れ替わり薬”の治験に参加する人々には
内容に応じて高額な報酬が支払われているー。
そして、住み込みで生活してもらう被験者たちには
それぞれ広々とした個室が与えられるほか、
研究所内の各種設備も利用できる。
娯楽設備も多数兼ね備えており、
被験者たちは、自由という面では限られるものの、
充実した生活を送ることができるようになっているー。
和美は、加奈(泰樹)の今日の観察を終えると、
その記録を見つめるー。
女になってから、最初よりもおしゃれを好む傾向が見え始めているー。
これも、異性と入れ替わったことによって心境に変化が
生じているのかもしれないー。
そして、続けて和美は入れ替わり相手である
泰樹になった加奈の方がいる部屋に向かうと、
「あ!和美さん!どうぞ!」と、嬉しそうにそう言葉を口にして、
中へと招き入れてくれたー。
”加奈”は大学卒業後、就職したもののパワハラで精神的に病んで退職ー、
そんな中、莫大な報酬を得られるこの治験と出会い、応募ー、
泰樹と入れ替わって現在150日目となっているー。
「ー最近はジムの方に通っててー」
研究所内の”ジム”に通ってることを楽しそうに語る泰樹(加奈)ー。
研究所内に設置されたジムは、
どうしても研究に没頭して運動不足になりがちな研究員たちも
よく利用する人気の設備の一つだ。
元々、運動が好きではなかった泰樹(加奈)は、
「男の人の身体になったら、運動が楽しくてー」と、
最近ではジム通いを続けているようだー。
「ーーへ~いいですね~!わたしも運動不足でー」
研究員・和美は苦笑いしながらそう言葉を口にすると、
「じゃあ加奈さん!今度一緒にどうですか?」と泰樹(加奈)は
嬉しそうにそう言葉を口にするー。
自分の身体よりも動きやすくー、体力があってー、
それでいて、”筋肉質になること”を、女であったときも
あまり気にしなくてもいいし、男の人の場合は筋肉もプラスになるような気が
加奈はしていたために、自分の身体の時では信じられないぐらいに
ジム通いを楽しんでいたー。
「ーーあははー、考えておきます」
和美はそう言葉を口にすると、
しばらく泰樹(加奈)と話をしてから、
「じゃあ、またー」と、挨拶を交わして
そのまま部屋から退出するー。
「ふ~~…中身が加奈ちゃんって分かってても、
身体が泰樹さんだから、なんか不思議な気分ー」
和美は廊下を歩きながらそう言葉を口にするー。
和美からすると、”泰樹(加奈)”の方が
中身は同性であるものの、
どちらかと言うと、”加奈(泰樹)”と話をしている時のほうが
女子同士で話をしているような、そんな感覚に陥るー。
入れ替わりを扱う研究所で働いている以上、
二人の状況はよく理解しているー。
ただ、不思議なもので”身体”の方で頭が認識してしまうのか、
泰樹(加奈)と接する際には異性と話をしているような感覚になりー、
加奈(泰樹)と接する際には同性と話をしているような、そんな感覚になってしまうー。
「ーーあ!”先輩”ー」
ふと、背後から可愛らしい声が聞こえるー。
そこにいたのはー、
和美よりもさらに若い女性研究員ー、坂部 莉々(さかべ りり)ー。
ギャルのような風貌の莉々を見て、
和美は思わず苦笑いをすると
「ーー”先輩”って言い方はやめて下さいよー…”所長”ー」
と、そう言葉を口にしたー。
「ーえ~?ダメ?」
揶揄うような口調で言う莉々ー。
「ダメです!わたしの調子が狂います!」
そう返事をする和美ー。
この”莉々”が若いのはー、”身体”の話ー。
莉々の中身は、既に70を超えている
この研究所の所長・海藤 陣(かいとう じん)という男だー。
「ーー大体、何、ギャルっぽくなってるんですか!?
入れ替わった時は、大人しそうな子だったのに」
和美がそんな風にツッコミを入れると、
莉々(陣)は「これも実験じゃよー実験」と、
そう言葉を口にしたー。
「いやいやいや、嘘ですよねー!?
所長の”趣味”ですよねー!?」
和美がすかさずツッコミを入れると、
莉々(陣)は「ーーそんなことないもん~!」と、
ふざけた口調でそう返事をしたー。
陣は研究者として非常に優秀な頭脳を持つ人物ー。
”入れ替わり薬”の第1人者で”代わり”は効かないほどの
優れた頭脳を持つ人物だったー。
が、そんな彼が病に倒れ、余命あとわずかとなったことで、
”入れ替わり相手”を探して、
こうしてその身体を手に入れていたー。
入れ替わり相手の”莉々”は、
事故により、昏睡状態が5年以上続いていて
回復の見込みが0と診断された身体だー。
事故の大怪我からは既に回復し、脳は機能していたものの
目を覚まさない、そんな状況が続いていたー。
莉々の両親も既に同じ事故で死亡しており、
残されていたのは、莉々本人とほとんど縁のない親族ばかりー。
そこで、親族に確認を取った上で
”色々な大人の事情”も働いたことで、
陣は、莉々と入れ替わって、莉々の身体を手に入れて
今に至っているー。
莉々本人が目を覚ます可能性も0.1パーセントぐらいはあったものの、
莉々本人と縁のなかった親族が”支払われる報酬”を望んだことや、
”陣”の優秀な頭脳を失いたくない”偉い人たち”の思惑が働いたこと、
そして、”入れ替わり薬の実験”という意味合いでも、
それは実行に移されたのだー。
”入れ替わった状態のまま片方が死ぬとどうなるのか”
その、実験だー。
”元の自分の身体が死んでも、他の身体と入れ替わっている魂は生き延びるのか”
それも、試して見ないと分からなかったため、
莉々と陣が入れ替わることでそれを試すこともできたー。
陣の身体になっても、目を覚ますことはなかった莉々。
陣の身体は病に冒されており、
程なくして、陣(莉々)は危篤状態となったー。
莉々(陣)は緊張した様子でその場にやって来るー。
”元の自分の身体”が死ねば、自分の精神も消える可能性も
十分にあったためだー。
「もしも私が消えたら後は頼んだぞ」
莉々(陣)はそう言葉を口にすると、
ゴクリと”元自分”が呼吸を停止する様子を見つめるー。
莉々の身体にいる”陣の精神”もそれと同時に消えるかもしれないー。
そう、覚悟して、莉々(陣)は静かに目を閉じるー。
がー…陣(莉々)が死亡しても、
陣の精神は消えることなく、莉々の身体に留まったままだったー。
「ーーー…入れ替わった状態で片方が死んでもー…
もう片方には影響はないー…ということじゃなー」
莉々(陣)は、まだ緊張した様子でそう言葉を口にすると、
安堵の表情を浮かべるのだったー。
そして、それから2年ー
今に至っていて、
莉々の身体を手に入れた陣は、おしゃれなギャルっぽい風貌になって、
すっかりあの頃とは別人のようになっているー。
「それでー…例の二人はどうかな?」
莉々(陣)は気を取り直した様子で、
長期の入れ替わり実験中の加奈・泰樹の二人について
確認するー。
「ーあ、はいー。特に大きな異常はないですねー。
ただ、だんだん異性の身体で過ごしているうちに
感覚的に元は異性だったはずの身体での生活に
慣れて来ていて、
元の性別に戻った時に上手く行くかなぁ~?みたいなことは
二人とも言ってますけどー」
研究員の和美がそう言葉を口にすると、
莉々(陣)は「あ~~…それはあるあるじゃな」と、頷くー。
「ー私も女になって2年したらー、もうすっかり男の時の
生活なんて忘れかけておるしなー」
莉々(陣)がそう言うと、
和美は「でも所長はまだ喋り方はそのままじゃないですかー?」と、
苦笑いしながら言うー。
「ーあぁ、まぁーそりゃそうじゃがー
でも生活の感覚とかはもうー、すっかり女になってるよー
自然と女子トイレにも入るし、歩き方とか、座り方とか、
そういうのも、全部なー」
とー。
「ーはぁ…そんなものなんですかー」
和美は少し戸惑いながら頷くと、
莉々(陣)は「和美ちゃんも入れ替わって見たらどうじゃ?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーあははーわたしは遠慮しておきます」
和美はそれだけ言葉を口にすると、
莉々(陣)は「そうじゃー…”三島(みしま)さん”と、”山塚(やまづか)さん”の
入れ替わりじゃがー」と、そう言葉を口にするー。
「ー何かあったんですかー?」
”三島 宗平”と”山塚 希海”ー、
別の被験者二人の名前を口にした莉々(陣)に対して
和美は少し不安そうな表情を浮かべるー。
すると、莉々(陣)は
「ー最近、異常な行動が少し増え始めているようじゃー。
これ以上悪化するようなら、その二人の治験は中止になるかもしれないー」
と、そう言葉を口にしたー。
和美は現在、その二人の担当ではないものの、
もちろん、施設内でその二人と会うことはあるー。
「ーー…そうですかー。わたしも少し注意して見ておきますね」
和美はそう言葉を口にすると、莉々(陣)との会話を終えて歩き出すー。
治験は加奈・泰樹のような
”上手く行っている”人たちだけではないー
上手く行っているケースも、そうでないケースも色々存在しているのだー
和美は、”上手く行っていない”被験者二人のことを
少し心配しながらその二人の元へと向かうのだったー
②へ続く
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コメント
入れ替わり薬実用化のための
色々なテストを行っている施設の物語デス~!!!
続きはまた明日~!☆
今日もありがとうございました~!☆

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